習近平、3選に暗雲か。権力闘争&重鎮から異論噴出でピンチ、問われる中国経済失速の責任

2022.06.05
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この秋に行われるとみられている中国共産党大会。日程がはっきりしない原因は、習近平国家主席の3選が盤石ではないことが影響しているといいます。中国経済の減速、ゼロコロナ政策の余波など、内政外交ともに思うように進まない習近平政権は今後どうなっていくのでしょうか。政治ジャーナリストの清水克彦さんが、習近平指導部の政策を検証しながら考察していきます。

清水克彦(しみず・かつひこ)プロフィール
政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師。愛媛県今治市生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得期退学。文化放送入社後、政治・外信記者。アメリカ留学後、キャスター、報道ワイド番組チーフプロデューサーなどを歴任。現在は報道デスク兼解説委員のかたわら執筆、講演活動もこなす。著書はベストセラー『頭のいい子が育つパパの習慣』(PHP文庫)、『台湾有事』『安倍政権の罠』(ともに平凡社新書)、『ラジオ記者、走る』(新潮新書)、『人生、降りた方がことがいっぱいある』(青春出版社)、『40代あなたが今やるべきこと』(中経の文庫)、『ゼレンスキー勇気の言葉100』(ワニブックス)ほか多数。

中国共産党大会の時期でわかる、習近平の安泰度合い

国際社会の注目が依然としてウクライナ情勢に集まる中、今年の秋、超大国のアメリカと中国が、今後の国際情勢を左右する大きな政治イベントを迎える。

アメリカは、11月8日、下院の全435議席、上院は3分の1にあたる34議席が改選となる中間選挙。そして中国は、習近平総書記の3選がかかる第20回共産党大会(20大)を控えている。

アメリカの中間選挙は日程がはっきりしているのだが、現時点で中国共産党大会の日程について、中国国営メディアは「今年後半に開く」としか伝えていない。

香港紙の明報は、4月11日付の紙面で「11月開催の見通し」と伝えているが、仮にこれが事実であれば、これまで確実と見られてきた習近平総書記の3選は100%とは言い切れなくなる。

5年に1度の共産党大会は、中国共産党幹部の人事を決め、指導部の体制を固める重要な場である。権力闘争は付き物だ。

前回(2017年)の大会は10月に開催されている。今回も、習近平総書記の3選がほぼ確実であれば9月から10月、権力闘争が続いているなら11月になる可能性が高い。

11月は15日から16日まで、インドネシアのバリ島で、中国も参加するG20首脳会議が開かれ、政治日程は窮屈だ。それにもかかわらず11月開催となれば、習近平総書記の3選が盤石とは言い切れない、と見ることもできる。

景気の減速に歯止めがかからない中国

習近平指導部に揺らぎが生じかねない背景はいくつかある。1つは、習近平総書記の3選に、かつて共産党の重鎮だった朱鎔基元首相らから異論が出ている点だ。

不動産大手、IT企業などへの締め付けが主な理由で、習近平総書記の政策が中国経済の減速を招いているとの声は根強い。

恒大集団のデフォルト危機で知られるようになった不動産バブルの崩壊は日増しに深刻化し、住宅価格の下落が止まらない状態だ。この元凶が習近平指導部の政策にあるというわけだ。

事実、4月27日付の英国紙、フィナンシャルタイムズは、中国共産党幹部の間で不動産企業への締め付けを継続するかどうかで意見が対立している、と報じている。 

政治局常務委員の韓正(江沢民派)、政治局委員の胡春華(李克強派)と、政治局委員の劉鶴(習近平の側近)との間で対立があるというのである。単に政策に関する考え方の相違というよりは、共産党大会を見据えた権力闘争の感が強い。

もう1つは習近平指導部による「ゼロコロナ政策」の余波だ。

中国最大の経済都市、上海では、6月1日、およそ2か月ぶりに、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として導入された都市封鎖(ロックダウン)が解除され、市民の9割にあたる2250万人が自由に外出できるようになった。

とはいえ、上海をはじめ北京でも行われた「ゼロコロナ政策」で、個人消費などの経済活動は大きな打撃を受け、何より市民の間で度が過ぎた政策に対する不満が充満する事態を生じさせている。

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