消費税に改憲、日韓関係。参院選で投票先に迷ったら検証すべきポイントは

 

岸田総理のNATO接近というのも大きな問題です。仮に日本がNATOに加入すれば、大きな抑止力になります。ですが、仮に事実上加入してゆくことになれば、相互主義から欧州の戦争に対して自動的に日本は集団的自衛権行使による参戦が必要になります。その場合には、第2次大戦の最終交戦国である日本はアフガンにおけるドイツのように、「犠牲の上乗せ」を強いられたり、簡単な話にはなりません。

では、豪州との関係をどうするのか、ASEANとの関係はといった問題は非常に複雑です。仮に日本がNATOとの事実上の同盟を確立したとして、フィリピンはどうか、韓国はどうかといった問題もあります。それ以前の問題として、ロシアや中国との関係において、強い抑止力が発生する反面、ウクライナがいい例であるように反発も激しいものがあると思います。いずれにしても、この問題は、各候補が何をどう考えているのかを考える試金石になると思います。

外交ということでは、韓国との距離という問題もあります。鳩山某氏のように、是々非々でもなく一方的に韓国の主張に乗っかっても、問題は解決しません。ですが、だからと言って韓国との感情的な対立を煽って票にしようという態度も極めて罪深い訳です。この問題に関しては、そもそも韓国の歴史、文化、風土を知っているか、そして隣国である韓国とどういった関係を続けていくのか、抑制的で実務的な姿勢が求められます。

軍事問題に戻りますが、核武装の問題はあります。この問題に関しては「論議すら拒否」「論議はするが慎重もしくは反対」「積極的」の3つのグループに分かれるのだと思います。問題は「積極的」というグループで、その場合は、NPT、つまり佐藤栄作が成立に努力した「核拡散防止条約」から日本は脱退し、同時にNPT体制は崩壊して、世界における核戦争の危機は瞬時に拡大します。ですから、NPTを維持しつつ、日本は核抑止力を確保する方策を考えなくてはなりません。この論点を無視して、安易に「積極的」な立場を表明するのは無責任だと思います。

外交に関しては、とにかく台湾問題と沖縄、中国との距離、ロシア北方政策など現在のような状況では、相手国に対する深い理解、実現可能な選択肢と有効な態度について、どれだけいいセンスを持っているかは、政治家の資質として重要です。

続いて共産党の問題があります。先日の一時帰国の際、共産党の街宣活動を見てブッタまげたのですが、何とウクライナのナショナルカラーをパクって、ポスターやバッチにしているのです。ただ、そこで訴えているのは専守防衛と護憲論だけなのですが、ウクライナのように攻め込まれたら徹底抗戦をするつもりなのか、ロシアよりはNATO支持なのかという点では不明です。とにかく専守防衛と護憲を戦闘的にやりたいのか、今一つわかりません。

共産党の問題は、例えば立憲が共産と組まないと野党連合にならずに小選挙区や一人区で勝てない一方で、共産党と組むと票が逃げるなどとウロウロしているとか、維新や国民はアンチ共産を売りにしているといった現象がある訳です。問題は、21世紀の現在、西側の自由主義、自由経済圏で共産党というのは、ほぼ歴史的に否定されているという事実です。

経済活動の国営化は、非効率なだけでなく全員が不幸になるので否定されています。また格差是正は、自由主義の延長で可能になっています。労組はアメリカのように、自由経済の枠組みの中で労働基本権を確保すればよく、経済全体を計画経済にしても何の効果もないばかりか、巨大な弊害があることも知られています。

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