中国が大激怒。ペロシ米下院議長「電撃訪台」が日本にもたらす災厄

 

ロシアは、8月1日にプーチン大統領が書簡で「核戦争に勝者はおらず、そのような戦争を決して起こすべきではないとし、国際社会のために『平等で不可分な安全保障』を支持する」と述べ、ロシアがまだ主役級の役割を果たしているNPTの場を借りて、ロシアが責任ある核保有国であるというイメージをアピールし、「ウクライナ戦線での核兵器使用は、非常時を除き、選択肢にない」というようなスタンスを示したものと理解できます。

これだけであれば、「それで何なのだ?」と疑問を抱かれるかもしれませんが、これは「核兵器の世界2大保有国として、核兵力の均衡は安定をもたらす」という従来の抑止論を踏襲するのみならず、中国などが核戦力を大幅に拡大することへの警告とも呼べるメッセージとも捉えることができ、それを直接中国やイランに伝えるかわりに、ウクライナでの戦争という媒体を使って、核兵器の2超大国としての意志表示をしたものと考えられます。

ここに国連安保理の常任理事国である5か国、つまり核保有国の間に生じている抗しがたい分裂を、何とか“核保有”という共通点を強調することで修復に向けたきっかけを作ろうとしているという見方もできます。

これは、今週、いろいろと情報交換をし、議論している人たちの間で出てきた見解ですが、私もそう感じます(ただ、私としては、広島県と共に核廃絶に向けたお仕事、核なき世界づくりの実現のために働いていますので、このトレンドは逆流させたいのですが)。

そして“ウクライナについての米ロの落としどころ”と似た形で、“台湾をめぐる米中の落としどころ”の一つの要素が、「台湾海峡をめぐる問題に核兵器使用の危険性を含めない」という内容が話し合われているという噂を耳にしています。

中国にとって台湾はずっと核心的利益の筆頭ですし、台湾を併合して中国を統一することは宿願でもありますので、そのような対象に核を用いることはないと考えますが、偶発的に、そして受動的な形で、反撃としての核使用の可能性を排除するために、それが出来てしまうアメリカとの間で、水面下の合意をしていると考えています。

もちろん、中国、ロシア、米国にとっての予測不可能な核保有国として、皆、北朝鮮の動向を非常に気にし、交互に様々な圧力をかけていますが、この表面的にアジアでの軍事的緊張が高まっている今、北朝鮮が余計なことをしないことを切に願います。余談ですが。

そのあたりの戦略がどこまでシェアされているかは知りませんが、今週のペロシ議長の訪台という“イベント”を機に、様々なところで停滞していた国際情勢の案件が一気に動き出すかもしれません。

そして、その変化の開催地がアジア太平洋であった場合、確実に日本はその渦に巻き込まれることとなりますが、その急変にきちんと対応するだけの準備は出来ているでしょうか?

ペロシ議長の訪台を受けて、中国が激しく抗議し、軍事的な圧力を高める中、しっかりとアメリカも原子力空母を送り込んで警戒に当たる姿は、同盟国の利害を守るため(そして自国の地政学的な影響力を保持するため)にアメリカは即応するという覚悟を示したとも読み取れるのは、アメリカを唯一の同盟国に位置づけ、大規模かつ高レベルの米軍基地を日本の領土内に駐留させている日本にとっては悪いニュースでは決してないと思います。

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