中国が大激怒。ペロシ米下院議長「電撃訪台」が日本にもたらす災厄

 

そしてその背後にある思惑は、ウクライナに集中しているように思われるアメリカの注意をアジアにも向けさせ、かつ中国を側方支援するという狙いも透けて見えます。

その証拠に、これはあまり報じられていないのですが、シベリアや北朝鮮近辺に配備されている(注:ウクライナ戦線には投入されておらず、北東アジアにおけるロシアの地位の確保に尽力している)部隊と戦力を一部、東シナ海近辺におけるアメリカ軍の動きへの牽制として使えるように、即応態勢を取っており、日本海経由か太平洋側を回るのかは私には分かりませんが、米軍の動き次第では、台湾海域まで廻ってくる可能性を秘めています。

仮にそのような事態が水面下ででも進んでくると、そのど真ん中に位置するともいえる日本は、のほほんとはしていられないでしょう。もちろん、それが報じられればですが(個人的にはお盆を穏やかに過ごせるといいなと願っています)。

今回のペロシ議長の訪台をトリガーとした米中対立のエスカレーションの影響は、間接的にではありますが、ウクライナ情勢をめぐる世界の分断の影響を受けていると思われますし、またその逆も同じかと思います。実際に中ロの側に立って、ベネズエラ・キューバ・ボリビアがアメリカを非難していますし、最近、僅かな増産に合意したOPECプラスの各国も、今回のペロシ議長の訪台に対して、非難はしないものの支持もしないという態度を取っています。

アメリカとしては、NATOという軍事同盟の枠組みを通じて、“その一員”としてウクライナ問題に対処しようと考え、欧州各国を巻き込んだはずが、原油・天然ガスという資源を用いたロシアからの揺さぶりに見事に結束を崩され、欧州側の反ロシアの機運が揺らぎ、軍事的な支援が滞る・遅延する中、アメリカによる対ウクライナ支援が突出することになっています。

これまでのところ、議会上下院の支持は得られているようですが、一般市民、つまり有権者たちの関心は大きく薄らぎ、かつメディアでさえも、疑問符をつけるようになってきています。

その要因の一つが、まさかここにきて再度トランプ前大統領の話になるとは思ってもいませんでしたが、選挙中に何度となくバイデン陣営を責め立てたバイデンファミリーの“行き過ぎたウクライナへのコミットメント”の存在が再度クローズアップされ始めています。

ハイマースの供与などで、ウクライナが善戦していることを強調することで、批判の目をかわそうとしているようにも見えますが、あまり国内的に効果が期待できないように見えてきたかと思うと、今度はペロシ議長の訪台を新たなカート、そして米国連邦議会の超党派でのサポートという図式を作って、批判の目をさらに逸らそうとしているようにも思えます。

一応、先述の通り、ホワイトハウスはペロシ議長の訪台とは少し距離を置いていますが、秋に中間選挙を控え、このところ、民主党の不利が至る所で囁かれる中、ホワイトハウスと、下院議長のポストを守りたいペロシ氏の利害が一致し、concerted actionとして、アジア歴訪の一部に訪台が加えられたとも見ることが出来ます。

特に、アメリカ国内で中国への警戒度が高まり、同時に国民の支持も得ていることで、【中国が激怒してアメリカを責め立てる姿】を通じて、国内の連帯を高めようという意図もあるように思えます。

しかし、先ほども申し上げたように、当事者が米中(そして台湾)のみである限りは、今回の第4次台湾危機とも呼ばれる軍事的な緊張の高まりが、戦争に発展することはないと思われます。

その理由は、米国のバイデン大統領が秋に中間選挙を控えるという国内政治の都合があるように、中国の習近平国家主席も、自らの“異例ともいえる”3期目の可否がかかる5年に一度の共産党大会を控えて、共産党内の反習近平勢力を押さえ込んでおく必要があります。

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