中国が大激怒。ペロシ米下院議長「電撃訪台」が日本にもたらす災厄

 

中国にとっての核心的利益ナンバーワンに挙げられる“台湾の祖国(中国)への統一”への挑戦ともとれるペロシ氏の訪台を見過ごすという弱腰は絶対的に避けなくてはなりません。しかし、大事な政治日程を控える中、アメリカと不可避的に敵対して、戦争前夜というような緊張関係の増大という事態も避けなくてはなりません。

前回の1996年の第3回台湾海峡危機の際とは違い、中国の軍事力は質・量ともにかなり向上しているため、前回のようにアメリカの比較的本気度の高い介入にたじろいで台湾への圧力を弱めるという事態にはならないですが、まだアメリカとの軍事力の差は歴然であることも自覚しており、習近平氏も、中国共産党の幹部も、アメリカと交戦するような事態も避けたいと考えているからです。

しかし、懸念は、一応共産党の支配下にあるとはいえ、それに反発もあり、鼻息も荒い中国人民軍が、突発的に軍事行動を取らないように押さえ込めるかどうかというポイントです。

ウクライナ侵攻においてロシアが思いのほか苦戦したのは、開戦当初からアメリカの支援が入っており、過去14年にわたってしっかりとしたシステムが形成されていたからという分析もありますが、それは台湾の軍についても同じことが言え、特にトランプ政権時から台湾への武器供与および軍事的な作戦支援が提供されていることで、中国は計画通りに台湾を軍事的に支配するためには、かなりの犠牲を強いられることになりかねないとの分析が中国人民解放軍の内部で行われていることも、中国の動きを制している一因ではないかと考えられます。

国際政治ではよく見られることですが、あくまでも“現状維持”が最善の策という見込みが、米中双方からなされているのではないかと、私は見ています。

バイデン大統領と民主党にとって、習近平国家主席と中国共産党にとって、それぞれの権力基盤を守るためには、ある程度の緊張が形成されていることは望ましく、対立構造はキープしつつ、すでに落としどころは見つけつつあるというのが実情だと思います。

この“おとしどころ”ですが、ウクライナでの戦争と戦後処理に対して、実はすでにアメリカとロシアの間である程度のすり合わせが行われていると思われます。

もちろん(?)直接的な悲劇の舞台になっているウクライナは蚊帳の外ですが。

その内容に深入りすると、またどろどろしたお話になるので、今回は避けておこうと思いますが、その手打ちのエリアの一つが、両国における核戦力の内容です。

ちょうど8月1日から始まったNPT再検討会議に、日本からは岸田総理が出席し、演説を行いました。広島アクションプランの提示、若者世代が広島・長崎を訪れ、核兵器(原子力爆弾)の悲惨さを追体験するための基金の設立、そして来年のサミットに向けて核なき世界を目指すためのプラットフォームづくりへの決意などが述べられました。核兵器禁止条約への言及がなかったことに失望を表明する方もおられますが、個人的にはとてもよい演説を行われたと思います(そして英語で演説されたことは高く評価できます)。

その同じ会議でアメリカはブリンケン国務長官が一応外交的なスタンスに則って、ロシアが核兵器使用の可能性を盾にウクライナでの戦争を行っていることを非難しつつも、NPT体制の維持・継続が、核不拡散のためには不可欠であり、NPTの精神に則った国際取り組みにコミットすると発言しました。

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