安倍氏が残した負の遺産。現役サラリーマン「9割が老後貧困」の現実

 

社会保障制度のすべてがパンクして、財源不足になる!

先進国のなかには、日本のように人口置換水準を割り込む国が増えていますが、なぜ少子化になったのか──という原因については明確にされていません。さまざまな原因説がありますが、日本では子供を産んでも保育園に預けられない、出産すると女性の職業キャリアが断絶される、グローバル化による貧困化で経済的ゆとりがない──など、主に社会的環境や経済的な影響が大きいという指摘がなされています。

そして少子高齢化は、近い将来の日本に重大な危機をもたらします。年金・医療・福祉といった社会保障費激増の問題です。たとえば、おなじみの年金問題では、2000年に現役世代3.6人で1人の高齢者を支える形だった賦課方式(現役世代の年金保険料を高齢者世代へ仕送りする形式)における年金負担比率が、2025年には現役世代1.8人で1人の高齢者を支える形になります。そして、2050年には現役世代1.2人で1人の高齢者を支える形になると推計されています。これでは、とても高齢者を支えられません。

年金積立金(過去の年金財政の余剰分)は、2021年度末に約190兆円ありますが、今後毎年10兆円程度の取り崩しを続けていけば、20年も待たずに枯渇します。これまでは、運用でどうにか収益を上げたり出来ていましたが、今後は非常に不透明です。保険料の財源不足分を税金投入しようにも、予算の捻出は困難なのでまず無理でしょう。今後、マクロスライド方式で年金受給額は徐々に減らされていく予定ですが、現行で65歳からという受給開始年齢も、70歳や73歳くらいに後ろ倒しするか、現行水準より大幅に減額するしかなくなる──といった蓋然性(がいぜんせい)が高いのです。

すでに、基礎年金である国民年金の枯渇を遅らせようと、年金保険料の納付期限を60歳(40年加入)から65歳(45年加入)に延長する議論が政府内でもすすめられています。5年延長で100万円程度の保険料負担の増加になるのです。生計に足りない分を生活保護に頼ろうとしても、預金や持ち家(現在、高齢者の持ち家率は6割)があると、それを費消してからでないと生活保護の受給対象にもなりません。また、借金がある場合も、基本的に生保での返済は認められないので、任意整理や個人再生もしくは自己破産で債務整理して借金をゼロにしておく必要があります。生活保護支給総額 (国が4分の3、地方が4分の1負担)も2009年度に3兆円を突破して以降、2021年度は3兆7,625億円と年々増え続けています(164万世帯203万人が受給)。

国の負担額だけで見ても約2兆8,000億円は、2021年度の国家予算(106.7兆円)の2.6%を占めています。そして、生活保護の支給額を抑制するべく、さまざまな減額措置が講じられ、各地では訴訟沙汰にもなって、減額は無効といった判決が出ています。しかし、そうはいっても、日本の財政は1,200兆円を超える借金を抱えているので、今後も減額措置がいろいろと講じられることは間違いないでしょう。ともかく、日本はカネ詰まりだからです。前述した通り、現役世代の医療費自己負担額も現行の3割負担から4割、5割負担にアップする他なく、このままでは、年金も医療も福祉もすべてがパンクするわけです。

そして、消費税率も現行の10%を15%、最後はEUの最高標準税率のように、20%越えにまで引き上げていくことを政府は模索しています。輸出戻し税で儲かる輸出大企業を核とする経団連は、消費税率アップに大賛成です(税率アップで儲けが増えるため)。現役世代の可処分所得(税金や社会保障費などを除いた自由に使えるお金)もますます減って、貯金をする余裕さえもなくなっていくでしょう。現役世代でさえ、家計はアップアップで、老後資金の準備どころではないわけです。人口減少という負のスパイラルが、いかに恐ろしい状況を作り出していくか──ということです。人口増加とまではいかなくても、せめて現状の人口数を維持できなければ、日本国は衰退の一途をたどるだけなのです。

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