安倍氏が残した負の遺産。現役サラリーマン「9割が老後貧困」の現実

 

消費税率換算2%弱(4兆円)あれば少子化に歯止めも?

少子化対策の抜本的アイデアとして、民間からは「1人目の子供を産んだら500万円支給、2人目には1,000万円支給」などといった大胆でユニークな提案もなされましたが、政府は一顧だにしませんでした。カンタンに試算してみましょう。仮に1人目の赤ちゃん誕生の母親に200万円支給して新生児が100万人生まれれば、かかる費用は2兆円です。2人目出産の母親に500万円支給して新生児が20万人誕生すれば1兆円です。3人目の赤ちゃんの母親に1,000万円支給して新生児が10万人誕生すれば1兆円です。つまり、子供を2人授かった世帯の家計には700万円が支給され、3人授かった世帯の家計には、しめて合計1,700万円がプレゼントされるプランです。地方なら家一軒が買える金額です。

これらの合計で財源は4兆円必要ですが(消費税の税率換算で2%弱に相当)、これだけ手当すれば、子供を産みたいという夫婦のモチベーションアップにもつながるのではないでしょうか。しかもスタートの初年度ならば、4兆円も要らないでしょう。3兆円程度の予算からで、まずはこうした支援策を実施して効果を探る──といったチャレンジを行うのも一法だったはずですが、今となっては、もはや手遅れかもしれません。

たとえば、2022年度の主な税収見込みは、所得税20.4兆円、法人税13.3兆円、相続税2.6兆円、消費税21.6兆円、その他を合計してもやっとこさで約65兆円です(これ以外の歳出不足額の45兆円は借金)。この税収65兆円の6%程度の予算4兆円で、現在の出生数の1.62倍に相当する130万人の新生児が毎年継続的に誕生するなら、少子化にも歯止めがかかります。現時点の日本の人口1億2,200万人を維持できる合計特殊出生率も概ね2.08となって、人口置換水準(2.07)をわずかながら上回って微増しますから、少子化対策としては、お安いものになるのではないでしょうか。

政府は、ロシアのウクライナ侵攻の影響もあって、防衛費をGDPの1%前後(約5兆円)から、EU並みの2%程度(約10兆円)に向けて今後増やすと明言していますが、膨大な武器購入で米国を潤す予算が計上出来るぐらいなら、今からでも少子化対策に振り向けたほうが、マシなのではないでしょうか。少子化に歯止めをかけられれば、赤ちゃんが成人する20年後以降に税収が増えることだって期待できます。また、生産年齢人口(15歳から64歳までの生産に従事できる人口・2021年は7,556万人で減少中)が確保されれば、GDPも縮小しないですみます。これぐらいドラスチックに、赤ちゃんを産んだ家計を支援しなければ、人口減少を本気で阻止するのは到底無理でしょう。

フランス政府の強力な「少子化対策」!

フランスでは、「人口減少」を国難ととらえ、1990年代前半に1.6レベルまで落ち込んだ合計特殊出生率を2006年以降は2.00前後まで戻しています。2子以上の子育て世帯への家族手当の充実、3子以上世帯への家族手当の加算や所得税の減税、3子以上の養育親への老後の年金10%加算、出産に関わる費用や不妊治療費の無償化、両親ともに出産育児の有給休暇の取得援助、高校までの子供の学費無料、公立大学の学費もほぼ無料、幼少時の保育サービスや学童保育もほぼ無料などなど、事実婚でも婚外子でもOKで、こうした手厚いサービスが受けられるようにしています。こうした政策が見事に功を奏したのです。日本の「少子化担当大臣」とかいうおバカな看板が、チャンチャラ無策でおかしく思えるほどの強力な少子化対策を講じてきたのがフランスだったわけです。世襲ボンボン議員が4割を占める自民党には、一族の保身と利権口利きでのカネ儲けに忙しい議員ばかりで、まともに将来を考える政治にはてんで興味がないでしょう。ゆえに日本では、今後も人口減少は止むなし──ということになるのです。

この記事の著者・神樹兵輔さんのメルマガ

初月無料で読む

 

print
いま読まれてます

  • 安倍氏が残した負の遺産。現役サラリーマン「9割が老後貧困」の現実
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け