プーチンついに「核使用」決断か。ロシア軍“不気味な撤退劇”の裏側

 

ただゼレンスキー大統領が掲げた5つの前提条件をロシア側が聞き入れることはないため、実質的にはウクライナはまだ交渉による解決を考えていないというメッセージだと理解できます。

つまりアメリカ政府は“交渉による解決”を目指すように要請したものの、当事国双方はNot ready for negotiationというメッセージを送ったのだと考えます。

特にウクライナ側は欧米から供与される武器弾薬のおかげでロシアの侵攻を押し戻し、今後も徹底的に抗戦するという意思を示しているので、“交渉”は選択肢の上位には来ませんが、これは非常に危険な賭けに出たと私は見ています。

どのようなケースでもやはり、例えそれが水面下で行われる非公式な話し合いであっても、意思疎通を図るためのチャンネルはキープしておくのが筋ですが、その選択肢は断っているようで、ウクライナサイドはかなり強気の姿勢に見えます。

ただし、これを支えているのは、アメリカからの膨大な支援の存在ですが、まだ結果が出ていない中間選挙の結果によっては、共和党が掲げるように【対ウクライナの白紙小切手は切らない】という姿勢が優勢になった場合、頼みの支援が途切れ、ウクライナ軍が一転大きなドツボにはまる可能性があります。

また先日も書きましたが、アメリカ軍の兵器の在庫にも問題が出てきているようで、今後、台湾情勢や北朝鮮への対応、そして同盟国防衛のための資材などに鑑みた際、ウクライナに供与できる武器の数も質も大きく落ち込む可能性が指摘されています。

一説によれば、2023年1月以降は対応できない状況になりかねないとされていますが、その“アメリカの穴”を欧州各国が迅速に埋めることが出来るかというと、かなり疑問です。

戦争がすぐに終結することはないと見ていますが、終結に向けたnext stepは、核使用という悪夢の方向ではなく、あくまでも交渉による話し合いであるべきだと考えます。

しかし、その格好の機会と見ていたG20サミットも、今週になってプーチン大統領の不参加が囁かれる中、行き詰まりを打開する場にはなれないかもしれないと危惧しています。

話は少しそれますが、今回、プーチン大統領が本当にG20出席を回避するとしたら、私はとてももったいない戦略上の失敗をすることになると考えます。

もし本当に自らが行っている行動が正しいことを証明したいのであれば、たとえ話が平行線を辿ったり、他のリーダーたちが効く耳を持たなかったりしても、生の声で直接訴えかける姿は、もしかしたらG20メンバー国のリーダーのシンパシーを勝ち取れるかもしれません。

そこには中国の習近平国家主席もいますし、ロシアに辛口のコメントをしていてもロシアとの関係強化を進めるインドのモディ首相もいます。そしてロシアとの距離を一気に縮めるサウジアラビア王国のモハメッド・ビン・サルマン皇太子もいます。ロシアの侵攻や核兵器使用の脅しに対しては非難するかもしれませんが、ロシアの立場にも一定の理解を示そうとするかもしれません。

代理としてラブロフ外相を派遣するのは実用的かもしれませんが、与えうる効果は限定的でしょう。

しかし、プーチン大統領が物理的な参加を見合わせる理由はほかにもあります。戦況が悪化していると言われる今でも、実際にはプーチン体制が崩壊することは早晩には起こりえないと考えますが、開戦当初に比べると、強硬派からの支持の度合いは低くなってきているように感じます。

また軍部の中にも明らかな戦術上の間違いを指摘する強硬派が存在し、彼らの存在はプーチン大統領とその側近たちにとっては脅威となりかねません。

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