サッカー日本代表、クロアチア撃破でブラック企業が減少? W杯効果で進む有給休暇消化、「ドーハの退職組」も

2022.12.05
by たいらひとし
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強豪スペインを「ドーハの奇跡」で撃破し決勝トーナメントへ駒を進めた、サッカー日本代表。クロアチア戦は6日午前0時(日本時間)からキックオフとなる。そんな日本代表の勇姿を最後まで見届けようと、観戦に備えて6日に「有給休暇」を取得する会社員が急増している。すでに終了したドイツ戦、コスタリカ戦、スペイン戦でも「有給休暇」の取得は増えていたようだ。また、「サッカー観戦で仕事どころじゃない!」と考える人が増えているからか、熱狂的なサポーターの中には現地観戦のために退職した人も少なくない。今回のW杯によって、日本人の労働意識が変わってきている可能性があるようだ。

仕事そっちのけでW杯観戦に夢中。日本人の意識に変化か?

2日のスペイン戦終了後、「今日は祝日に」がTwitter上でトレンド入りを果たした。

ちなみに、サウジアラビアが優勝候補アルゼンチンを破った際、サウジ国王は翌日を「国民の休日」にしている。

岸田首相も日本代表にスペイン戦勝利のお祝いコメントを出したことから、「さすがに今日は祝日だろ」「今日は祝日です」と、半分本気で「お休み」を叫ぶ声がネット上に溢れていた。

実際、早朝4時の試合開始とあって、眠い目をこすりながら観戦、逆転勝利の興奮冷めやらぬまま出勤しても仕事にならなかったという日本人は多かったに違いない。

W杯を機に会社辞めた「ドーハの退職組」も?日本人の意識に変化の兆し

6日のクロアチア戦も深夜0時開始であり、たとえ日本が勝っても負けても翌日の仕事の生産性は低くなるに違いない。

ネット上にも「明日はいっそのこと休んだ方がいい」「明日の休み確定」という声がすでに多くあがっている。

「現地で観戦したいので長期休暇を取りたいけど、有休は取得しづらい」という理由から、これを機に会社を退職したというサポーターも多いようだ。いわば「ドーハの退職組」。

普段から有休を取りづらいブラックな企業であればあるほど、こういうときの退職者が多くなるのは必然だろう。

今回のW杯をきっかけに、人手不足で苦境に立たされているブラック企業は、今すぐにでも自社の労働環境を見直したほうがいいようだ。

年5日間の「有給休暇」を取るのは権利ではなく義務

日本の労働基準法は2019年4月より、「雇い入れの日から6ヵ月継続して雇われている」「全労働日の8割以上出勤している」という2点を満たした労働者は、年次有給休暇が取得できると定めている。

そして使用者は、労働者に最低でも年5日間の年休を取得させる義務がある。

半年以上普通に働いていれば、誰でも5日間は有休を取得できるため、まだ有休を消化していない人であれば、仮に日本が決勝まで戦ったとしても余裕で試合の翌日を休みにすることができるのだ。

そして6ヵ月勤務からは10日間の有休となり、以後、半年ごとに1日づつ日数が増え、6年6ヵ月以上継続勤務すると年20日間の有休を取得できるようになる。

つまり、7年程度の勤続年数があれば誰でも年間20日間は有休を取得できるのだ。

現実は甘くない。サッカーファンも有休を取りづらい日本

しかし、実際に有給休暇を消化しているサラリーマンは数少ない。

令和3(2021)年に厚生労働省が公表したレポート「令和3年就労条件総合調査の概況」によると、令和2(2020)年の労働者1人あたりの平均有給休暇取得率は、過去最高で56.6%だったにも関わらず、付与された日数が平均17.9日に対し、実際に取得した日数は10.1日。

全体の平均でも10日余りなのだから、ましてブラック企業であればなおさら有休は取りにくい状況に違いない。

もしフルで20日間の有休を消化すれば、11月20日~12月18日の全日程は滞在できないにしても、日本代表を応援することぐらいは誰でもできるはずだが、現実的には厳しいようだ。

サッカーファンが有休を取得する時代。これは、日本がワールドカップへの出場を逃した29年前の「ドーハの悲劇」以前には考えられないことだった。

それほど、日本国民にサッカーとサッカーを応援するという土壌が出来たという証しなのだろう。

せめて、4年に一度のお祭りなのだから、試合のあった日を休むくらいは許されていいのではないだろうか?

ネット上には、早くも明日の休みを宣言する人や、サッカーを応援するために会社を退職した人など、今回のW杯によって「働き方」を大きく変えた日本人たちの声が多くあがっている。

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