今までお金持ちを優遇しすぎた日本。元国税が今すぐ導入を勧める「富裕税」とは?

 

所得や消費に税金をかければ不景気になる

政府与党としては、今後、消費税などを増税していく上で、富裕層優遇をそのままにしておけば国民の不満が生じるということで、富裕層の増税を検討しているのでしょう。

が、これまでも富裕層の増税は何度も検討されてきました。しかし、富裕層の増税はなぜか途中で見送りになったり、実施されても抜け穴が多くて実質的な増税には至らないこと多いのです。だからこそ「富裕層の方がフリーターより税負担が安い」というようなことが起きているのです。

筆者は、富裕層に対しては、所得税を増税するのではなく、資産に課税する富裕税の創設を強く推奨します。

昨今、財務省は、「所得」や「消費」にばかり税金をかけようとしてきました。バブル前後から日本は低所得者の所得や消費に対する税を強化してきたのです。現在、日本の税収の柱は、「法人税」「消費税」「所得税」です。これらの三つの税金は、すべて“所得”か“消費”にかけられるものです(法人税は会社の所得にかかる税金なのです)。しかし本来、税金というものは、“所得”や“消費”だけにかけるものではありません。“資産”にかけることもできるのです。

そして、資産に税金をかけるということは、実はもっとも公平でもっとも大きな税収を得られるのです。所得や消費というのは、国民生活に直結するものです。所得税(低所得者の)を増税されれば、給料の手取り額が減ります。そうなると、生活は苦しくなるし消費も減ります。それがまた不景気を呼ぶことになります。

消費税でも同じです。消費税が上がれば、物価が上がります。同じ給料で物価が上がるなら、当然、生活は苦しくなります。物が高くなると、消費額も減っていく。これも景気を冷え込ませてしまいます。しかし資産に税金をかければ、そういう国民生活への負担というのは最小限に抑えられるのです。

資産というのは、所得から消費を差し引いたものです。当座、必要なものではない、いわば予備のお金です。それに課税するのです。消費にはまったく影響しないし、国民生活が苦しくなるわけでもありません。富裕層の富に直接アクセスできるのです。

資産に税金をかけるのは別に珍しいことではありません。たとえば、アメリカなどでは州税の大半を資産課税で賄っています。というより、現在、日本の資産への課税は非常に少ないのです。資産税には相続税がありますが、これもほとんど機能しておらず、相続税が以外の資産課税もほとんど機能していないのです。

今の日本経済は、所得や消費が減り、資産が異常に膨らんでいます。先進国と比較しても、所得や消費は高くないのに資産だけが大きいのです。

それは、低所得者の所得や消費にばかり税金をかけ、金持ちの資産に税金をかけてこなかったからでもあります。なぜ資産に税金をかけることはできなかったのでしょうか?

それは、金持ちが抵抗してきたからです。資産に税金をかけるということは、金持ちに税金をかけるのとほぼ同意義です。資産に税金をかけようとすれば、金持ちがうるさいのです。あの手この手で政治家に圧力をかけて妨害します。そのため資産に対する課税はこれまでほとんど行われてこなかったのです。

だから財産税を創設して、金をしこたま貯め込んだ金持ちに、社会還元させなければならないのです。

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