4月以降、67歳までの人と68歳以降の人で「年金額に差異」が生じるワケ

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さて、賃金の伸びが上がると、必然的に支払う保険料額も増えます。そうすると自動的に年金も賃金の伸びの分だけ増えます。

就労世代が支払う保険料をその年の年金受給者に送る年金の支払い方式を「賦課方式」といいますが、就労世代の賃金が伸びれば支払う保険料も増えるので、その分年金も自動的に増えるわけです。ほとんどの国の年金はこの賦課方式です。

この時、保険料負担額が増えるからなんとなく、負担が増えたなあ…と感じてしまいますが、「保険料率」で取ってるので見た目の負担が上昇したわけではありません(賃金に対する負担割合は変わってない)。

賃金の伸びで年金額を変更すると何がいいかというと、現役世代と年金世代との生活水準の差が開く事はありません。

現役世代と年金世代の生活水準に差が開かないようにしていたのが賃金の伸びによる年金額改定だったのです。

昭和48年改正時に、現役男子の平均賃金に対して約60%以上の給付を維持するという「年金の実質価値の維持」が目標とされた時、賃金変動率に合わせるという事がその目標を達成するのには最善でした。

実際は5年に一度の年金額を再計算する時に賃金の変動率を使って、年金額を変更していました(これを賃金の再評価という)。

5年に一度が来るまでは毎年物価変動率で購買力の維持。

平成16年度以降は5年に一度ではなく毎年、賃金の再評価をするようになりました。

しかし、平成16年の前の改正である平成12年改正で65歳以上の人(実際は68歳到達年度以降から)は物価変動率で年金額を変更する事になりました。

もし現役世代の賃金が物価の上昇よりも伸びると、そこで両者の生活水準に差が出てきます。

物価より賃金が伸びれば、現役世代はより良いモノやサービスが受けれるようになりますが、物価の伸びに合わせると購買力が維持されてるという状態にとどまります。

平成12年改正以降はせめて購買力の維持でやっていこうという事になったのですね。

しかしながら、物価よりも賃金のほうが下がるという事も、今までの間に結構ありました。デフレ続きだったからですね。

じゃあ、賃金の伸びよりも物価の伸びの方が大きかったらどうするのか。

こうなると支え手である現役世代の賃金の力を、年金受給者の力である物価が超えちゃってますよね。

そのまま年金額を変更してしまうと、支え手の力を上回るのは年金財政を守る上では都合が悪いので、こういう時は65歳以上の人(実際は68歳到達年度以上の人)の年金も低いほうである賃金の伸びに合わせていました。

こういう例外がよくあったのです。

じゃあ、令和5年度を見てみると物価は2.5%の伸びで、賃金は2.8%の伸びですよね。

つまり年金財政を支えてる現役世代のほうにとって都合がいい状態になっています。

年金財政にとって都合がいいのであれば、原則通り65歳以上の人(実際は68歳到達年度以上の人)は物価変動率を使って年金額を改定し、65歳未満の人(67歳到達年度までの人)は賃金による年金額改定を行います。

よって、令和5年度の年金額は68歳前後で金額の伸びが異なるため、金額にズレが生じる年となります。

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