急増するメンタルヘルス不調による休職者。その時お金はどうするのか?

 

会社は労働者として見る、主治医は患者として見る

会社は労働者と雇用契約を結んでいます。それは大体「この労働(100)に対してこれだけの賃金(100)を支払う」と言う内容でしょう。

しかしここで病気や怪我をした場合、労働者は100の労働を行えなくなってしまいます。

なので本来ならば100の労働が行えるようになるまで主治医は患者さんを治療すべきですし、もしも50までしか労働ができない状態までしか回復しない場合は正直降給や転職も視野に患者さんに説明すべきだと私は思います。これは冷たいとかではなく「それが雇用契約だから」です。

しかし最近職場でのストレスで受診にきた患者さんとお話をしていると何故かこの視点が抜けてしまっている人がいます。

「私は職場のパワハラのせいで前のように働けなくなりました!(事実)今やっても仕事は50しかできません!(事実)だから会社は50しかできない私に100の賃金を支払うべきです!(なんで?)」

ここで主治医が「そうだそうだ!患者さんは今50しか仕事ができないくらいになってしまったんだ!会社に責任があるから患者さんには50の仕事量で復職させてあげろ!そして100支払え!」と言ってしまうと患者さんは「主治医もこう言ってるからこれが当然の権利なんだ!」と勘違いしますが、それは主治医が労働を理解していない場合起こり得る話です。

ここで会社が「うちは100の労働ができる人に100の賃金を払うことにしているから、100ができないのであれば退職してください」と言ってきても、会社に非は正直ありません(仮にパワハラが原因で職場がちゃんと指導していたら防げたのでは?と言う話があったとしてもそれはそれで別の話であり、一緒に考えてはダメな話です)。

主治医が復職可能と診断したのに産業医が断るケース

このように「100働けないけど普段は泣かなくなったし本人も働きたいと希望しています」と言うような診断書を主治医が出した場合、産業医は復職不可と判断するでしょう。

主治医と患者さん目線からすれば「本人はやる気を取り戻したのに!」と思うかもしれませんが、自分が雇う側だった場合どう思うでしょうか?

それはやっぱり「いや、100できるようになってからにして欲しいよ」なんじゃないでしょうか。職場に少しバッファーがあれば「60-80位できるようになっているなら60-80の給料で雇い直す」と言う提案もできるかもしれません。でもそこまで余裕のある職場ばかりでもありません。

同じ職場に復職を患者が望んでいる場合、主治医は職場の産業医に対して「この人は今就労していないけれども100の労働をこなせます!」をいかにわかってもらえるように伝えることが超重要なポイントになってきます。

ただここまで考えて動いていない主治医も残念ながら多いので、もし自分が患者(労働者)の立場になってしまったら(今なっているなら)「あ、確かに働けそうですね!」と職場にアピールする方法も視野に入れて休業しないといけません(当たり前ですが本気でガッツリ休まないといけない時には考えたらダメです!回復が遅れるだけなので、「働けそう!」と自分で自覚してから主治医と相談しながらやりましょう)。

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