急増するメンタルヘルス不調による休職者。その時お金はどうするのか?

 

リハビリ通勤はほとんど存在しない&お金の話

よく外来で患者さんから「だいぶん回復してきたので今なら午前中だけなら働けそうです」と言う話が出たりしますが、実際職場に確認するとそういった制度を持っている職場はほぼありません。労働者のために頑張って用意してくれる会社もありますが、その際に絶対問題になるのが賃金です。

何度も書いていますが会社は「100の労働に対して100の賃金を支払う」ので、午前中だけの勤務(例えば40位)に対して100を支払う義務はありません。40働いていたら40くれるだけめっちゃいい職場だと思ってください。

さてここで休職中のお金の話をしましょう。

メンタル系だけでなく身体を壊して休職している間、健康保険(国保除く)に加入していた場合は正規雇用だけでなくパートさんなども「傷病手当金」を受給することが可能です(業務に関係ないところで発生したものに限ります。業務に関係していた場合は厳密に言えば労災になりますが、今回関係ないので割愛します)。

傷病手当金はざっくり言えば休んでいる間給与が支給されない場合、給与の2/3が支給される制度なので、復職してわずかでも賃金が発生した場合この給付は止まります。

休養していて給与の2/3が支給されていたのに、時短で復職したらもらえるお金が減るという事態になることは十分理解してから動かないと経済的に詰んでしまいます。

ここで焦って「じゃあ100働きます!」とそこまで回復していないのに言ってしまうと、どんな病気でも結局はすぐに行き詰まり再度休職となりかねません。

その展開は患者さんはもちろん、会社は一番嫌だと思っています。なので「復職だ!」となった場合はやはり最初から「100の労働が可能です!」と言えないと会社から「復職可能」の返答はもらえないと思っておいた方が良いです。

話は紆余曲折しましたが、休職からの復職の最低条件は「労働力を安定して提供できる状態まで回復している」ことで間違いはありません。

産業医面談や会社の面談で復職を勝ち取るためにやると良いこと

自分の心で「できる!」と言っていても仕方がありません。客観的に「これは復職できそうだ」とならないと再雇用をする側はやはり二の足を踏むものです。

じゃあどうしたら良いのか?というとある程度動けるようになったら徐々に仕事モードの生活を家の中で再現するようにしましょう。

毎日何時に起床した、今日はニュースを朝からチェックした、夕方まで軽い本をある程度読めた、食事は3食食べられた、外出して買い物を手伝った、夜は入浴して仕事に行っている時間と同じくらいに入眠した……。

という日々の記録をつけるとかなり有効です(記録はスマホでもなんでも良いですが、チェックしたニュースや本の内容を簡単に添えると「要約する能力」も復活してそうだな、と相手も納得度が上がります)。

実際私も休職をした身ですが、こういう準備なく復職が許可され(主治医が当時の勤務先から開業した先生だったので職場も信頼してたっぽい)、毎日ぐーぐー寝ていた時間にいきなり外来になり最初は本当に体力がついて行かず体力不足から抑うつ状態が再発しかけたという苦い経験があります。

メンタルの場合も身体の場合もいきなりフルタイム勤務を開始するのはかなりしんどいのでどちらにおいても「自分で慣らし活動」をしておくに越したことはありません。これは主治医が慣れていれば指導してくれると思いますが、主治医から何も言われない(私は言われなかった)場合を見越して、ある程度動けるようになったら主治医に「そろそろ早起きしてみて良いですか?」など確認をとりながら自分でやって記録を取っておきましょう(診察の時に持参しても診察の参考になると思います)。

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