図々しい独裁者プーチン。ウクライナ戦争後に「ロシア中心の世界を構築」という皮算用

smd20230210
 

間もなく開戦から1年が経過するものの、依然として膠着状態が続くウクライナ戦争。ロシアの暴挙により分断されてしまった国際社会はこの先、どのような道を辿ることになるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、現在起きているという「世界の3極化」について詳しく解説。さらに各国の思惑を分析しつつ、ウクライナ戦争の今後の予測を試みています。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

プーチン大統領が作り出した「歪み」。ウクライナ戦争が国際情勢に与える分断

Keeping at it.「諦めずにやり遂げる」というのが日本語訳だと思いますが、ロシアによるウクライナ侵攻を巡って、ロシア・ウクライナ双方がこのような心理に陥っていることがよくわかります。

ウクライナにとっては当然のことですが、自国および自国民の存亡をかけた最大の戦いであり、諦めることは即座に国家の消滅か、不可逆なロシア化が進むことを意味し、20年余りの“独立”に終わりが訪れることを意味します。

それを何としても食い止めるために、欧米社会を味方につけてロシアによる蛮行に対抗し、反攻しているのがウクライナの人たちであり、それを後方支援しているのがNATO諸国という構図です。

そしてロシアにとっては、プーチン大統領が抱くグランドデザインに沿って、自国に次いで地域第2位の軍事大国になり、欧米諸国の影響が強まってきたウクライナの力の伸長を食い止めるという“国家安全保障上”の懸念と、ウクライナを未だに独立国とは見なさないという基本姿勢も合わさって、今のうちにロシアに対抗する芽を摘もうという狙いがあっての軍事作戦(侵略)という性格が見られます。

プーチン大統領の行動に対しての価値判断はあえて避けますが、国内外に抑えるべき対象(190以上の少数民族、14の国境など)が満載のロシアの大統領で、ロシア国民の生命と安全を守るための行動としてのウクライナへの攻撃というのは、彼を支持する人たちにとっては筋の通った話なのでしょう。

どちらの国もリーダーもkeeping at itの姿勢に陥り、雌雄を決すまで止めることが出来ないのが現状と言えます。

ゆえにゼレンスキー大統領は、当たり前の主張なのですが、「ロシアに不当に侵略された領土全てが返されるまでは戦い続ける」と言わざるを得ませんし、プーチン大統領は、多くの誤算があったにせよ、一度始めてしまった戦争をやり抜く以外には選択肢がないと信じて、攻め続ける姿勢を崩していません。

ロシアが隣国に侵略をしたということに対して支持を表明する国はありませんが、ロシアが抱く懸念にシンパシーを感じたり、欧米諸国とその仲間たちによるロシアに対する制裁はやりすぎと考えたりする国々はそれなりの数に上っています。

そこで何が起きているかと言えば、世界の3極化です。

欧米諸国とその仲間たち、つまりロシアに対しての制裁措置を取っている国々のグループが一つ目。中国やイラン、北朝鮮、ミャンマー、シリアなど、ロシアに対してシンパシーを持ち、反欧米諸国の姿勢を崩さないのが2つ目。そして3つ目が、ロシアによるウクライナ侵攻は非難するものの、経済制裁には加わらず、逆に実利主義の立場からロシアとの貿易も積極的に続ける国々が第3極で、その筆頭例がインドとトルコと言えます。

Emerging economiesに分類される中南米諸国、中東諸国、そしてアフリカ諸国は、中ロから受けている経済的な支援の存在に加えて、国内にロシアや中国と類似した内政問題を抱えており、欧米諸国とその仲間たちからは人権問題を指摘されているという共通点から、明日は我が身との認識も働き、対ロシア制裁には加わりません。しかし、totalitarianな性格を持ち、中央集権的な統治を進める特徴がある第2グループには近いものの、その場の利益に沿った動きをする特徴もあることから、別のグループ(第3極)に属します。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 図々しい独裁者プーチン。ウクライナ戦争後に「ロシア中心の世界を構築」という皮算用
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け