図々しい独裁者プーチン。ウクライナ戦争後に「ロシア中心の世界を構築」という皮算用

 

自らの行動によって欧米諸国とその仲間たちとの関係修復が不可能に近くなったロシアは、対ロシンパシーを拡大するために、第3極に属する国々に接近して国際社会における完全なる孤立を避ける戦略に出ています。

ここ最近のラブロフ外相の南アやマリ、ケニアをはじめとするアフリカ諸国歴訪、少し前に行われた中東諸国(サウジアラビア王国、UAE、カタールなど)との対話と戦略的パートナーシップの締結を行っています。

その結果、第3極の国々からのロシア非難が収まり、ロシアはそれらの国々に安価でエネルギー資源と食糧、軍事的な技術などを輸出するという構図が出来上がっています。そうすることで、ロシアの孤立はかろうじて免れ、新たな勢力圏・パートナーシップが形成されているのが現状です。

以前、ウクライナ戦争後の世界のために新しい世界秩序を作り始めることが必要とお話ししましたが、ロシアサイドは、現在、ウクライナで戦争を遂行しつつ、外交面では“ロシア中心の新国際秩序”または“グループ”を形成しようとしているように思われます。それがどこまで拡大するかは、今後のウクライナでの戦況にもよるでしょう。

では、ウクライナはどうでしょうか?

新国際秩序云々の話にまでは恐らく考えは至らない状況かと思いきや、しっかりと停戦後の国としての生存方法も考えているようです。

先日のワシントンDCへのサプライズ訪問に続き、今週は英国・ロンドンを皮切りに、フランス・パリ、そしてベルギー・ブリュッセルを訪問して、EU内での立ち位置を確保しようとしています。

もちろん主目的は、現在、ロシアによるウクライナ侵攻に対する反攻攻勢を強め、ロシアの企みを挫き、ウクライナを守るための手段と支援の確保・拡大ですが、何らかの形で生き残った場合、戦後の立ち位置、そして安全の保障のため、EU加盟も含めた策を考えています。

当初はロシアからのaggressionに対して直接的に反撃してもらうためにNATOへの参画を望んでみましたが、ロシアに与える刺激の大きさを懸念して、NATOは選択肢として取り上げない決定をしました。

一応、表向き、プーチン大統領がウクライナ侵攻に乗り出す理由として挙げたのが、NATOの東進への危機感ですから、NATOとしてロシアとの直接的な戦闘を避けるためには致し方ないと言えます。

ただEU加盟も非常にハードルが高いと思われます。今年に入ってEU加盟に必要とされる政治の透明性(transparency)条件に応えるため、汚職の恐れがある政権幹部を、戦時中であるにもかかわらず次々と更迭する決定を行いました。多少、士気に関わる副作用が出ているようですが、ゼレンスキー大統領の目は、現在の戦闘よりも、生き残った後の位置づけに注がれているように感じます。

それは同時にウクライナ側も戦況の膠着状態を認識しており、急に戦況が動くことはないとみている証拠と言えるかもしれません。

東部ではまだ戦略的な地域の帰属をめぐる非常に凄惨な戦いが続いていますが、一進一退の攻防が続いており、ロシア・ウクライナ双方に多くの犠牲を出しつつも、決定的な状況には至っていません。

ただ長期戦の中で疲弊し、消耗が激しいのは実際にはウクライナ側だと思われ、その場合、NATO諸国からの支援の遅れは直接的に反転攻勢の停滞または失敗に繋がりかねないぎりぎりのラインまで来ているとの情報もあります。

ゆえに身の危険を顧みずに欧州各国を訪れて、ドイツのレオパルト2戦車に代表される最新兵器の供与の時期を一刻も早めてほしいという要請を行っているようです。

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