東芝の「上場廃止」が晒した、日本の会社経営と監視監督システムの異常

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かつては日本を代表する企業だった東芝の上場廃止が、国内外で大きなニュースとなっています。そんな同社を巡る一連の「事件」を振り返っているのは、Windows95を設計した日本人として知られる中島聡さん。中島さんは自身のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で今回、同社を「コーポレートガバナンス(企業統治)が未熟な日本企業の典型」としてそう判断する理由を解説するとともに、外資系ファンドの知人が日本からの撤退を決めた理由を明かしています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

私の目に止まった記事:東芝の上場廃止を英BBCはどう報じたのか?

Japan’s Toshiba set to end 74-year stock market history

東芝の上場廃止に関する、BBCの記事です。日本でも報道されていると思いますが、海外から見た場合にどう映るかを学ぶ上では、とても良い記事です。さらに、日本のメディアが作るウェブ上の記事と異なり、関連する記事へのリンクも記事中にちゃんと貼ってある点がとても便利です(例:経営陣と経産省が結託して外資系ファンドの株主としての意見を封じ込める方向に動いた件を報じた記事:「Toshiba: Scandal-hit chairman ousted by investors」)。

東芝にまつわる様々な事件を並べてみると、日本の会社経営及び、それを監視・監督する仕組みの異常さが目につきます。

  1. 2006年 経産省の指導で、国策として原発会社のウェスティングハウスを巨額買収(6370億円)
  2. 2015年 巨額の粉飾決済をしておきながら、誰一人として逮捕されず
  3. 2016年 稼ぎ頭の東芝メディカルを売却(6655億円)
  4. 2017年 ウェスティングハウスの破綻で、巨額の損失を計上(9656億の赤字、債務超過)
  5. 2017年 債務超過を解消するために第三者割当による新株発行(6000億円、参照:「東芝出資で驚愕利回り、投資ファンド高笑い」)
  6. 2018年 半導体子会社、東芝メモリを売却(2兆円)
  7. 2021年 イギリスのCVCキャピタル・パートナーズからの買収提案($20 billion)を拒否
  8. 2023年 日本産業パートナーズ(JIP)による株式公開買い付けが成立、上場廃止へ

ウェスティングハウスが、「原発ババ抜き」のババであったことが致命傷でしたが、東芝という会社を存続させるためだけに、稼ぎ頭の東芝メディカルや東芝メモリを売却したことが結果としては、株主に巨額の損失をさせることになった点は注目に値します。本社の救済などせずに、東芝メディカルと東芝メモリの株を渡してもらった方が、株主にとってははるかに良かったのです。

米国では、東芝のような会社は、いわゆる「ハゲタカファンド」の餌食になり、さっさと分割売却されてしまいます。日本では悪いイメージですが、社会全体の新陳代謝が早く進むので、経済全体にとっては「健全な活動」なのです。

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