ジャニー喜多川さんによる性加害問題ということでマスコミが大騒ぎしていますが、この時点でフィルターがかかっています。これはセクハラで済むものではなく、暴行傷害事件であり、児童虐待であるのです。ここまで私、上杉が沈黙していたのは、率直に言って、ジャニー喜多川さん本人が亡くなっているし、終わった問題でもあると思ったんですね。しかし、児童虐待に遭った少年たち、元少年たちの当時の傷つけられた心っていうのは、何年経っても、何十年経っても癒されず、人生そのものの重石になっているということに改めて気づきました。
23年前、私自身がこのジャニーズ問題の取材をしていたことについて、まずはお話をしたいと思います。
ジャニーズ問題に関しては、当時ニューヨークタイムズにいた私は、もっとも早くこの問題を報じたジャーナリストのうちのひとりだったと思います。ただ、この問題を報じたがために、その後の約20年近く、ジャニーズタレントとの共演禁止という報復を食らい続けることになりました。
それでも、ジャニーズ事務所との共演禁止を食らいながらも16本のテレビレギュラー、8本のラジオレギュラーを得たというのは、なかなかの人気者だったということでしょう。しかし、仮に、共演禁止にならなければ、もっと別のジャーナリズムの道、あるいは人生があったのかなと思うと、やはり少し失望せざるを得ません。
さて、この問題は、ジャニーズ事務所の問題というよりも、共犯者であるメディア、つまりテレビ・ラジオ・新聞・雑誌・ネット・通信社の問題であり、彼らによる長期間の犯罪を知らないと本質を見間違えると思います。いかんせん、まだネットがそれほど普及していない23年前のこと、取材メモの一部も散逸してしまっていますが、それでも、多くの証拠や証言を保持していました。今回のリポートではそのあたりの情報も加えています。
(次回配信号に続く)
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