ジャニーズ報道で露呈した日本メディアの権力癒着性と欺瞞性
なにしろ、この問題は、故ジャニー喜多川氏が20代の若い頃から50年以上にわたって、男性アイドルを夢見てジャニーズ事務所に集まる未成年男子や児童たち数百人に、性的虐待を加えてきた──というのですから大問題なのです(ジャニーズ事務所は創業61年にのぼる)。
すでに性加害行為自体は、ジャニーズ事務所がスタートして間もないころから発覚しており、初期に所属した元フォーリーブスのメンバー故・北公次氏が告発本まで出版していたのに、マスメディアはスルーを続けてきたのです(1988年データハウス刊『光GENJIへ─元フォーリーブス北公次の禁断の半生記』)。
当時の月刊誌「噂の真相」も、この問題を取り上げています。
また、1999年には「週刊文春」も何度か取り上げたことで、裁判沙汰となり、結局ジャニー喜多川氏の性加害に遭った少年たちの証言の真実性が裁判で認められています(2004年最高裁の上告棄却で2003年の高裁判決が確定)。
しかし、大手マスメディアがこれらを報じることはないままでした。
ジャニーズ事務所のタレントたちが、人気を集め大きく躍進するにつれ、テレビ局・新聞社・出版社などの忖度がはたらいて、ジャニーズ事務所にとってのマイナスになる報道が控えられてきた──という、いかにも日本マスメディアの権力癒着性、欺瞞性を見事に象徴する出来事となっていたのです。
つまり、日本のマスメディアは戦前と同じ体質であり、「言論の自由」もへったくれもない状況で、強いものにはすぐなびく──恥ずべき特異性を露呈していたわけでした。
ジャニー喜多川氏が亡くなってから、死人にクチナシとばかりに、うって変わって、さんざん故人を叩きまくる──という異常な構図とも見てとれます。
なんといっても、今頃いっせいに報道するというのは、カッコ悪すぎなのです。
はっきりと、ジャニーズ事務所に忖度してきました、今の自公政権に対しても忖度して、マイナス報道を控えています、そんなわけで、どうもいろいろとまことに申し訳ありませんでした──という頭を垂れた「懺悔」のひとつも欲しいところなのです。それこそ厳しい自己批判があるべきだったでしょう。
「我々にも反省すべき点があった」などと、ひとことお茶を濁したマスメディアの取ってつけた神妙ぶったセリフに騙されてはいけないのです。
まさしく確信犯だったのであり、共犯の関係だったからです。
そんな騒ぎの中、ジャニーズ事務所を通して、所属タレントをCMや広告に起用してきた大手企業が、タレントの露出を一斉に封殺する動きが続々と出てきました。
中でも、この大きな流れを作るのに、決定的といわれるような役割を果たしたのが、サントリーHD(株)社長で、経済同友会代表幹事の新浪剛史氏の発言だったのです。
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