3.矛盾状態の気持ちのなかで、信仰を続ける信者たち
教団内で信者をしていくと、矛盾した状態になることがよくあります。
以前もいいましたが、アベルは神様の言葉は、絶対です。
それゆえに「カラスは白い」といえば、「カラスは白い」と信じて、前に進まなければなりません。
実際には、カラスは黒くても「白い」と信じなければならない。
もし「いや、カラス白い」という疑問が沸き上がれば、それはサタンの思いなので、心に封印しなければなりません。
こうした理不尽な状況のなかで行動しているために、自然に矛盾したような、理解できない言動が出てきてしまうのが、旧統一教会の特徴です。
矛盾した指示を与えられている心理状態をダブルバインドともいいます。
たとえば、霊感商法では「あなたには水子の霊がついている」といって恐怖心を煽り、悪因縁を切るためにといって、印鑑や壺などを売ります。
私が信者であったころ、講師仲間でも話題になっていたことに、教義上は「水子の霊はない」のではないかということでした。
文鮮明教祖は「赤ちゃんが、おぎゃーと生まれる時に魂(霊人体:統一教会用語)が入る」ということをいっていました。
文鮮明教祖の言葉は絶対ですので、お母さんのお腹のなかにいる時には、魂(霊人体)はないわけで、水子の霊は存在しないはずですが、霊感商法ではそのトークを使っていました。
教祖の言葉が間違っているのか、組織としての指示のどちらかが間違っていることになります。
以前に、勇気ある講師が集会で幹部にそれを尋ねました。
すると幹部は「そうなんだよね」とだけ答えて、話は終わりました。
ダブルバインドな状況下で活動し続ける信者の言動は、支離滅裂になりがちです。それは特に、誰から、何かを質問された時に、それが出てきます。
まさに記者からの質問に対して、田中会長の「お詫び」はするけれど、「謝罪」ではないとする答えが出てきたことからもわかります。
やはり社会の常識とは、乖離している世界で生きていることを感じます。
何より組織的に加害行為をして、被害を生み出してきた事実にしっかりと目をむけることが必要なはずですが、それをしない。このボタンの掛け違いこそが、社会との大きなズレになっています。
これをいかにして直しながら、日本社会のなかで行動していくのか。それが問われています――(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2023年11月14日号の一部抜粋です。続きは、ご登録の上お楽しみください、初月無料です)
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image by: Robert Granc, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で