小澤征爾氏に対する「どうでもいい」すぎる日本メディアの評価
小澤征爾氏に至っては、全くトンチンカンな評価になっています。日本人で初めてクラシックの指揮者として欧米で活躍したとか、ウィーンの国立歌劇場総監督という業界の最高の地位にあったといった、「どうでもいい」評価が横行しているのは困りものです。
そうではなくて、小澤氏というのは、ガチンコで現代曲の複雑な譜面を徹底的に分析して、作曲家が意図したであろう演奏解釈を自分でコツコツ作っていたのです。その結果として、今では世界中の指揮者が好んで取り上げる『春の祭典』とか『マーラー8番』『トゥンガリア交響曲』などの曲については、多くの指揮者が小澤氏というパイオニアが切り開いたからこそ、演奏ができるわけで、その意味では本当に小澤無双という存在でした。
その功績に関しては、業界で疑う人はいないと思います。とにかく、日本人・アジア人でありながら欧米で成功したから偉大なのではありません。そうではなくて、それまでは演奏解釈が確立しておらず、その結果として難しくて理解されていなかった20世紀の楽曲に対して、演奏の道筋を開拓した巨大な存在なのです。
とにかく、この2人の評価が、母国である日本で正当にされないということには、ガッカリを通り越して悲しい感じがします。
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