「恥を知れ」と居眠り議員を叱りつけ、道理の通らぬ記者には議論だって吹っかけた。会見で質問をはぐらかすばかりの小池都知事とは好対照の人物が、安芸高田市長の職を辞して東京都知事選に名乗りを上げている。石丸伸二41歳。彼が掲げる「 #東京を動かそう 」のスローガンは、古い政治をどう変えるのだろうか。元全国紙社会部記者の新 恭氏が、もはや泡沫とは言えない「石丸現象」の本質にせまる。(メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:石丸伸二氏は「小池VS蓮舫」構図に風穴を開けられるか
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「石丸伸二現象」観測、東京都知事選
6月20日に告示される東京都知事選挙。現職の小池百合子氏は学歴詐称疑惑などものともせずに出馬を表明し、メディアは「小池VS蓮舫」の激突、事実上の与野党対決……などと勝手に決めつけ、はやし立てている。
だが、もうひとつ気が乗らないのはなぜなのか。所詮は、政党、宗教団体、業界団体、労組といった組織がフル動員され、とどのつまり、様々なしがらみから抜け出せない古い政治が続くのだろうと諦めが先に立つからかもしれない。
その決まり切った構図に風穴をあける立候補予定者として、期待が寄せられているのが、前広島県安芸高田市長、石丸伸二氏である。YouTubeやX(旧ツイッター)に親しむ人であれば、おなじみの顔だ。
本会議の最中に居眠りしている議員を「恥を知れ」と批判し、議員数を削減する条例案を提出して議会と対立。記者会見では記者に議論を吹っ掛ける。妥協をせず、忖度もなしに相手を論破する。なれ合い町政に浸りきった議員や出来の悪い記者にすれば災難のようなものだ。
かといって石丸氏は激高するわけではなく、あくまで冷静沈着。とにかく、筋を通さねば気が済まないのだ。
そういう姿を、包み隠さずネットで公開するものだから、見たこともない鮮烈な政治家像が視聴者の心に描かれ、自然、フォロワーが増えてゆく。
有権者のロマンをかき立てる不思議なカリスマ性
6月15日、石丸氏は東京で初めての街頭演説を渋谷で行った。「SHIBUYA TSUTAYA」の前に、あっという間に人だかりができた。
「東京に帰ってきたという感じです。日本が豊かな国であることは事実。一方で世界の国々は成長を続けている。日本ヤバいなという危機感がある。揚げ足取られるだろうと思って東京解体と言ったが、解体が目的ではなく、スクラップ&ビルド。創造的破壊だ。イノベーションをこの街から起こしていきたい」
演説口調ではなく、ほどよく間をとりながら、無駄のない言葉でじっくり語りかける。
目立つ容姿でも、際立った声でもないが、理詰めで、説得力があり、不思議なカリスマ性を帯びている。
ひょっとしたら東京に“旋風”を巻き起こし、傲慢で閉鎖的な小池都政を終わらせるのは、どの政党にも組織にも属さないこの人ではないか、とロマンをかき立てられる。