(2)多摩川より何倍も危険な「荒川決壊」対策から逃げている
次に問題なのが防災減災です。そう申し上げると、例によって「財政規律は好きだが、公労協とズブズブの蓮舫候補」などは、多摩川の堤防がどうのこうのといった「インフラ仕分け」に走ろうとしています。
ですが、問題は多摩川ではないですし、そもそも現在のような災害の頻発する状況のなかでは、インフラの仕分けで財政規律を確保しても、誰も「安心」は得られません。
では、具体的にはどこなのでしょうか。多摩川は、確かに2019年の台風19号で被害を出しました。ですが、被害といっても小杉のタワマンが浸水して停電したとかで、多くの人命が奪われたわけではありません。
東京が水害を意識しなくてはならないのは、多摩川ではなく荒川です。同じ、2019年の19号台風の際には、東京23区のうち東部の10区は実際に「広域避難」を検討しています。なぜかというと、本当に荒川が決壊したら下手をすると数千単位での死者が出る可能性があるからです。
では、一体何人の避難が必要かというと、都がやっている「首都圏における大規模水害広域避難検討会」では、74万人を避難させなくてはならないとしています。そして、その避難先は「引き続き確保してゆく必要」があるとしています。要するに確保できていないのです。
つまり、仮に今年の秋に19年の19号台風以上の猛烈な雨台風が首都圏を襲い、特に利根川・荒川水系に猛烈な降雨が殺到、流域のダムや調整池などをフルで対応しても、最終的に荒川の決壊が不可避となったとします。その場合に、東京都の東部では広域の集団避難が検討されるでしょうが、現時点では避難先は決まっていないのです。
また、ここ数年の豪雨災害の際に言われている「垂直避難」、つまり建物の上の階に逃げるということでは、荒川決壊という事態になれば甚大な被害が出ます。武蔵小杉のような話では済まないのです。多くのタワマンが孤立して、自衛隊などにお願いして船で食料や水を配るなど、悲惨な状況になる可能性があります。
これは大変な問題です。避難先だけでなく、74万人をどのように整然と避難させるのか、もちろん、鉄道事業者などとの協議は始まっています。ですが、例えば2019年から5年を経過した現在では、例えばバスの運転手などは平時でも人手不足が顕著となっており、広域避難の足の確保は大変だと思います。
これは高度な、そして大規模な危機管理の問題です。東部の10区の区役所にはかなりの問題意識があります。10区の区長もそうだと思います。ですが、対策をしっかり固めるのは都庁です。そして都知事のリーダーシップが何としても必要なのです。
こうした大問題は、知事選の争点にして民意を受けて予算を付けるようにしなくては、前へ進みません。