(3)イノベーションの「足を引っ張る街」東京を自覚せよ
一極集中の問題も大きな争点です。少なくとも3つの論点があります。
1つは経済活動が東京に集中することで、東京以外の地方が衰退して地方経済が壊死してしまうという問題です。これを指摘して、集中を是正するという主張も成り立ちますが、少なくとも東京だけを考えると、わざわざ経済活動を地方にタダで回していく理由はありません。
2つ目は、一極集中が過度に進むことで東京におけるインフラや福祉などコストの負担が重くなって東京が倒れてしまうという問題です。交通インフラ、住宅インフラなどについて言えば、東京の現状は決して100%が充足されているわけではありません。
さらに言えば、これからの10年で一気に高齢単身世帯が増加する中では、税収を上回る歳出が必要です。そのカネをどうするのか、これは重たい問題です。少なくとも都営の認知症病院を作れば済むという話ではありません。
3つ目は、一極集中が進むことで、東京自体がダメになるという発想です。東京の何がダメなのかというと、まず地方に対して威張っています。とにかく民間なら東京の本社が、官庁なら霞が関の中央官庁が威張っています。
また、優秀な人材は東京に吸い寄せられており、大学も、そして就活も東京中心に回っています。
その結果として、東京でどんどん新しいものが生まれているのならいいのですが、相変わらず「AIの可能性より、AIの弊害の議論ばかりが先行」するなど、東京という街はイノベーションを推進する街ではなく、イノベーションの足を引っ張る街であり続けています。
さらに言えば、人材が集中しているということは、相変わらずムダな対面型コミュニケーションが幅を効かせているわけです。また、マイナー言語である日本語の、しかも意味不明の紙が大事にされ、そこにまた意味不明のハンコが押される、PDFにしたとしても、暗号化して同じメルアドにパスワードを送るという謎の儀式をしたりします。
つまり一極集中することで、旧態依然な仕事の進め方が残り、イノベーションが殺され、競争力をどんどん下げている。これが東京です。そこには、地方を見下しつつ、欧米やアジアに対しては自らを卑下するという、参勤交代的封建カルチャーの「中間点」的なものも乗っかっています。
とにかく、今の東京には活力がなく、前例踏襲型であったり、単に密室でのコミュニケーションが得意なだけであったり、イメージ戦略だけが上手な「内容の空っぽ」な人や仕事が集まっているのです。そして準英語圏ではないので、多国籍企業のアジア本社は東京には来ません。
では、大阪のようにIRにチャレンジするのかというと、どういうわけか、その度胸もないようです。これはあくまで議論の材料ですが、今、日本の経済が地を這うように低迷しているのには、東京という都市の持っているカルチャーが非常に行き詰まっているという問題があり、その背景に一極集中の問題があるという考え方もできます。
いずれにしても、現在の一極集中をどう考え、どう変えていくのか、これは大きな議論です。そこに、改めて東京の都市計画という問題が乗っかってきます。外苑の問題も、意味不明な再開発の横行も、この都市計画の問題に重なってきます。投機マネーを呼び込んだ結果、都心の住宅価格に異常なバブルを発生させて、しかもこれを放置した、そのことへの反省も必要でしょう。