日本型保守主義は国益を毀損しながら延命している
非常に入り組んだ構造がそこにはあります。軍事外交としては、自主防衛を放棄する代わりに、靖国参拝を人畜無害の国内向け行為だという保証をアメリカにしてもらう(キッシンジャーは周恩来に対して本当に保証したようです)という構造がまずあります。
経済面では、国内のDX改革をしない代わりにGAFAMに勝手にさせ、その代わりに北米市場では一定の収益を確保するという構造があります。
岸田政権は、岸田氏が理解していたのかは不明ですが、少なくともこのような異様な構造に依存する体質は薄かったのだと思います。
ですから、GAFAMに公取から規制をかけるとか、防衛費を2倍にするなどの安倍流からの「次官会議の意思としての修正」が入ったと見ることは可能でしょう。
それはともかく、安倍総理がこうした全体図を「意図して設計していた」とは思えません。独自の政治勘で手なりの将棋を指していった先に出来てきた世界というのが正しいと思います。出来上がってみると、それが一つの大きな構造体として自転を始めているということだと思います。
しかし、高市氏やコバホークが継承しようと思っても、それは容易ではないと思います。そして、そもそもこの全体構造には正しさは全くないし、国益という意味ではプラスにはならないと考えます。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2024年9月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。メインコラム「トランプとハリスの選挙事情」もすぐ読めます
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