選挙で負けては意味がない。ハラを決めた石破首相
石破政権は、麻生氏の観測通り短命なのだろうか。もちろん、すべては総選挙の結果しだいである。かりに自民党が大勝すれば、石破首相の求心力が高まる。単独過半数割れ、もしくは自公過半数割れなどの惨敗を喫し、「倒閣」に大義名分を与える情勢になれば、一気に反乱機運が高まるだろう。
不穏な党内情勢のなかで、石破首相が打ち出したのが、いわゆる“裏金議員”の非公認だ。下村博文、西村康稔、高木毅、萩生田光一といった安倍派幹部ら12人は非公認。安倍派が大半を占める53人の裏金議員のうち32人は公認するが、比例区での重複立候補をさせない。そんな内容だ。
総裁選の出馬表明会見で、石破首相は裏金議員の公認問題について、こう語っていた。
「公認するにふさわしいかどうか、我が自由民主党として国民にお願いするに足るかどうか、そういう基準は厳格に定めて、やっていくべきものだ」
ところが総理・総裁になって風向きがガラリと変った。厳格な基準どころか、裏金議員も原則として公認する方向だとメディアで伝えられた。厳格にすれば、裏金議員の多い安倍派から総スカンを食らい、党運営に影響が出る。「党内融和」をはかるために任命した森山裕幹事長にそう説かれると、石破首相は反論できなかった。
党内人気に乏しい石破首相が総裁選の決選投票で、多くの国会議員票を集められたのは、岸田文雄前首相や菅義偉元首相、そして、その周辺で暗躍した森山幹事長のおかげだ。彼らへの恩義が石破首相をしばっていた。
しかし案の定、裏金議員に対する甘い姿勢は世間の反発を呼んだ。党の情勢調査でもその影響らしきものが数字にあらわれ、このままでは総選挙で惨敗すると予想された。
党内融和を重視するあまり選挙で負けては意味がない。石破首相はハラを決めた。森山幹事長と小泉進次郎選対委員長らに裏金議員の公認問題について方針を転換し、対応策を練るよう命じた。森山氏らは厳しい順番にいくつかの選択肢を提示したが、その中から石破首相が選んだのは最も厳しい措置だった。