安倍派に一定の打撃も、「甘さ」が目立つ石破首相
ただし、かつて小泉純一郎首相(当時)がいわゆる郵政選挙でやったように、裏金議員に「刺客」を立てるということはない。その意味ではまだ「甘さ」が残る。選挙に滅法強い人にとっては、さほどの影響はないかもしれない。野党からは「大半は公認されるではないか」(立憲民主党・野田佳彦代表)との声も出るほどだ。
それでも、すでに分裂状態にある安倍派に、さらなる打撃を与えるのは確かだろう。石破首相の胸中には、高市氏を支持する勢力を追放し、政権の安定をはかりたいという思惑があるかもしれない。これに対して、安倍派からは「二重の処分を受けるのは不条理」などと反発の声が広がっているようだ。
しかも、一部裏金議員の非公認方針が、いまのところ国民から拍手喝さいを浴びている雰囲気はない。むしろ、国民の側から見れば、岸田前首相と同じで、党内の圧力と世論との間で揺れ動く頼りない首相としか映っていないのかもしれない。後手に回った感も否めない。
ちょっと変わり者で付き合いが悪いが、その分、独自の見識がある。信念もある。なのに、政権トップに立ったとたんにブレはじめる。良くも悪くも、人に配慮する“好い人”だからなのか。10月4日、衆議院本会議場での所信表明演説の後、廊下に出てきた石破茂首相。
取り巻きの人たちのなかに紛れ込んだ立憲民主党代表代行、辻元清美氏が声をかけた。「予算委員会の質問つくっていたのに私。残念だわ」
石破首相はフレンドリーに返答する。「ほぉー。で、どうしたのどうしたの?立ったの?」
予算委員会を開かずに衆院解散をすることへの柔らかな攻撃に対し、おとぼけで応じる。なんだか珍妙なやり取りだが、辻元氏はかまわずタメ口で続ける。「いや立つよ。だから石破さんが予算委員会やってくれたら立つよ」
石破首相「ああ、そうなんだ。ごめんね」
報道のカメラがまわっていても、威厳を取り繕うことはない。あけすけというか無防備というか。