「ただの差別」。児童虐待の経験者は記事をどう思ったか
私がこれまでやってきた活動の経験から考えて、この記事にある「いじめられやすい人の特徴」で思い浮かんだのは、児童虐待の被害を受けている子であった。
洗濯をしてもらえないので、服が汚れ、お小遣いなどは当然もらえないから何も買えない、幼いながらも周囲との差に気が付いているから暗くなり自己主張は出来ず、常にオドオドしてしまう。自分を守るために嘘をつかないと生きていけないから嘘をつくが、ジリジリと自分を蝕んでいるような気がしてならない。食事も運動もほとんどしていないから、背が低く極端に痩せている。
そして、その環境の中、彼らがいかに努力をしようが、改善をしようとしても環境は変わることはない。この記事を読んで、彼らはどう思うだろう。私は過去に虐待から救援し、現在大学生のA君に話を聞いてみた。
A君は小学3年生まで虐待の被害を受け、友人らが動いて保護者が動き、当時その区でいじめの実態講演などをしていた私に相談が入ったことで、学校警察児童相談所が動き出して救助された。私はカップ麺やうまい棒などの駄菓子、カロリーメイトなどをその時は常に持っていてA君に食べさせていたので、A君は未だに私を「マルちゃん」と言う。
A君 「今は平気ですけど、当時読んでいたら絶望したと思います。だって、自分ではどうすることもできないことですからね」
阿部 「A君はいじめの被害は受けていなかったよね?」
A君 「ええ、ここにある特徴のだいたい全てを満たしてましたが、いじめの被害は受けてなかったですね。むしろ、心配されてました。うちの子になるか?とか聞かれていたし、飯食わせてもらったり」
阿部 「そうだったね。周りの人たちがなんとかしようとしてくれていた」
A君 「だから、これ読んだとき、ただの差別だろって思ったんです。変えることできないし、自分の努力でどうにもならないことを変えたらいじめられないって言われても、それは無理ゲーだろって。マルちゃん、ブチ切れてんだろーな」
阿部 「いやいや、Xに投稿した通り、困惑したというのが先だね。まずは、意見求めてみようって思った。その後に段々怒りが出たけど、みんなの意見を聞いて、納得できることが多くて冷静になったよ」
A君 「僕は今研究したりしているから、冷静に読み返して気になったのは、これは統計ではなくて、個人の経験なんですよね、それも数字とかがない、だから、感想なんですよ。ひろゆき風に言えば、それってあなたの感想でしょ?なんですよ」
阿部 「感想ね。確かに統計がないし、広く見てではなく、個人として感じたことになっているね、特に16の特徴はまさにそれだね」
A君 「そう!だからこれって偏見だよねって思ったんです。それを、こういうヤフーとかのかなり多くの人が見る場でやったら、いじめ被害の当事者も見るわけだし、痛いなこの記事って思ったんです。だから、僕からみたら、痛いニュースですね」
A君は冷静に冒頭の記事をみており、記事に値しない単なる偏見の感想文に過ぎないと断じていた。そこには怒りより、冷静にこの人大丈夫という心配と疑問があるようだった。
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