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「お母さんタイプがいなくなれば戦争もいじめもなくなる」という主張

私が知る専門家の人たちは、みな議論ができる。むしろ楽しんでいるように議論を戦わせ、その後笑顔で握手をしたり集合写真を撮ったりしている。自分と違う意見の人がなぜそういう結論に至ったのか知りたいのだ。

私も加害者擁護の専門家と何度も意見交換をしたことがある。喧嘩もしなかったし、口論もせず、「なるほど、そう考えたのか?ではこういう事件はどういう感想を持ちました?」というように興味を持って話を聞いていくと、色々な話を聞かせてくれるし、いつの間にか、相手も「阿部君のいうこともよくわかるよ。今後も意見交換しよう。でも仲良しだと周りにバレると色々あるから秘密で」となったわけだ。

これはとても大切なことだと思うのだ。

問題を様々な観点で見ることはその本質や解決につながるヒントになるのだから、自分と違う意見の人との議論は勉強になる。議論をしたからと変説することはないし、この立場の人はこういう背景があるのかという政治的な発見があったりもする。

しかし、世の中には議論を対立と捉え、いきなり喧嘩腰になったり、人格攻撃をするような大人もいる。議論=喧嘩ではないのに、意見が違うというだけで、喧嘩相手になってしまうのだ。それではまるで格闘技バラエティーを地で行く世界観になってしまう。

冒頭取り上げた記事の著者も同様で、記事を取り下げ、自身のXアカウントからも記事のリンクを外した。その後、Xアカウントの投稿で一番上に出ていたのが自身のYouTubeで、「戦争をするのもいじめをするのもお母さんタイプ(エニアグラムという心理適性診断での区分)。お母さんタイプがいなくなれば戦争もいじめもなくなる」との主張だ。

しかも、「世の中の4割がお母さんタイプ」だというのだ。

そして、自分は「こういうタイプなので平和だから誰かと争わない。自分の殻にこもる」という。

お母さんタイプの典型例がホリエモンこと堀江貴文さんだと冒頭の著者が言っていたのには閉口した。

ちなみに私はエニアグラムでは「お父さんタイプ」であった。私は彼のような人の主張でもなぜそう考えたのだろう?何を伝えたいんだろう?と話を聞く姿勢は常に持っている。もっているからこそ、彼が言う心理適性診断をやってみたのだが、例えば、彼のいうお母さんタイプは多くは「タイプ2献身者」と分類され、「他者を助けようと全力を注ぐ。他者からの感謝や肯定的な反応を見返りとして求める傾向がある。自分に価値がある人間だという自信が持てないため、他者を助けることで実感しようとする。また、誰かを助けたい気持ちに反して、人から助けられたくないと思っている」という内容の説明が関連サイトでは多かった。

そして、他者を助けようとする行為が攻撃的になったりするから、争い諍いを起こすということのようだった。ただし、この診断は、9つのタイプの心理的特性の強弱を見るもので、どのタイプが強くどのタイプの傾向が弱いかで判断し、これを活用して自己成長していこうというものだから、このタイプだから危険というのは、ちょっと行き過ぎた議論ではないかと思うし、「ホリエモンはお母さんタイプだ!」と外から見ただけで診断してしまうというのもどうかと思うのだ。それこそ決めつけではないのだろうか。

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