バスに乗り遅れてしまう損失を避けたい
それでもなお、多くの投資家は市場のトレンドを読み、タイミングを計ることに魅力を感じてしまう。
これにはいくつかの心理的要因が存在する。第一に、「損失回避バイアス」と呼ばれる心理的な傾向がある。人間は利益を得るよりも、損失を避けることに対してより強い感情を抱く。そのため、「バスに乗り遅れてしまう」ことで受ける損失を避けたいという心理が働く。
こうした「バスに乗り遅れたくない」という心理を「FOMO(Fear Of Missing Out)」と呼ぶ。多くの人々が市場のトレンドに乗って利益を得ていると、自分もその波に乗らないと取り残されてしまうのではないかという強い不安を感じる。
この感情は、とくに他者の成功を目にしたときに強く働くものであり、SNSやオンラインコミュニティなどで他の投資家が大きな利益を上げた話を見聞きすると、自分だけが取り残されているような焦燥感に駆られる。
このような状況では、冷静な判断が難しくなり、リスクを十分に考慮しないまま短期的なトレンドに飛びつく行動に走りがちである。
実際に、多くの投資家がトレンドに乗って短期で大金を手に入れたなどの情報を目にするたびに、自己の判断よりも群集心理に従ってしまうことが多く、その結果として不合理なリスクを取ってしまうケースが見られる。
この心理は、とくにSNSなどを通じて拡散され、他者の成功例を見たときに強く働く。そうすると「自分も濡れ手に粟で儲けたい」と強烈に思う。その結果、多くの投資家が短期的なトレンドに飛び乗って、リスクを取ってしまうことになる。
金融メディアや株式アナリストもそれをあおる。市場のトレンドを報道するニュースは多く、メディアはトレンドに基づく予測を頻繁におこなって投資家を刺激する。
これらの情報は投資家に影響を与え、市場のタイミングを計ることを正当化する材料として使われがちである。これにより、投資家は短期的なトレンドに翻弄され、冷静な判断を失っていく。