連立政治のイロハのイも分からない小沢一郎という人
私はまだ小沢一郎さんには少し期待していて、野田代表の下で選挙対策本部長代行に就いたので、水面下で他の野党との連携、選挙協力のための工作を進めているんじゃないかと思っていたのですが、そうではなかった。それで今週の『週刊ポスト』に登場して「どういうわけか、野党が結集して政権をとりにいこうという発想が出てこない。解散総選挙も(野党が候補を)一本化できていたら、もっと勝っていたはずだ」などと語っている。
何が「どういうわけか」だ。お前がしっかり働かなかったから一本化ができなかったんじゃないか!まあ結局小沢さんも、93年に8会派をまとめ上げて細川護熙政権を作って55年体制を終わらせたのは凄くて、「小沢神話」が生まれたのですが、今になって振り返ると彼の成功例というのはあれだけだったんじゃないかとも思います。
実際、今度の選挙で、立憲民主党を軸に、例えば維新、国民民主とのいわば「中道右派連合」が出来ていれば、比例得票数を単純に合計しただけでも44.5%で、自公計の39.1%を上回った。逆に立憲が共産、れいわ、社民と「中道左派連合」を組んだ場合でも37.1%で2ポイント足りないけれども、一本化効果が大きいから、やはり自公を上回ったでしょう。こんなことはイロハのイですが、なんで分からないのか。
これと関連して、玉木雄一郎さんなどが口癖のように言うことに「基本政策が一致しなけれ協力はできない」というのがありますが、これは全くの間違いです。そもそも「基本政策」が何を意味しているか不明ですが、例えば共産と組むのに「あそこは日米安保廃棄、天皇制打倒を言っているじゃないか」ということを意味しているのであれば、「そんなことは次期政権の4年間(イタリアの下院だと5年間)の内に成し遂げなければならない喫緊の課題ではありませんよね」という話です。
理念やその直下の基本政策が同じなら一緒の党になればいいわけで、そこがどんなに隔たりがあろうと、当面の課題の2つか3つかで合意ができれば政権が組めるわけだし、次の選挙ではまた別の組み合わせで次の課題で組めばいいわけです。そこに連立政治時代の醍醐味があるということが分からないのですね。
もう1つ、これに関連して、小選挙区制を導入しても「政権交代ある政治風土」は実現しなかったから、中選挙区制に戻すべきだということを言う人がいます。自民党の中にもいるし、公明党は前々からそうですし、最近では国民民主の古川元久が音頭をとって自民、立憲、国民、共産などの50人ほどの議員が新しく「政治改革の柱として衆院選挙制度の抜本改革を実現する超党派議員連盟」を結成したりしていますが、私はこれには反対です。
日本はイタリアと違って、せっかくこの制度を導入しておきながら、それを徹底的に使いこなすことをしてこなかったわけです。「制度を小選挙区制に変えただけではダメだった」と言いながら、その運用についてきちんと検証し総括しないでまた選挙制度を中選挙区制に変えたところで同じことでしょう。
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