「一本化」できなかったのは小沢一郎のせい。“政界の壊し屋”が連立政治イロハのイの字も知らぬ大問題

 

「SNSを駆使すればどんな選挙にも勝てる」という“新常識”

大きな柱の第3として、SNSを特に若い世代とのコミュニケーションの手段として重視し、それを積極的に活用するための人材育成やメディア開発に取り組むべきです。

米大統領選挙では、旧ツイッターを買収して「X」と名称変更しただけでなく、これを一層金儲けができる仕組みに次々に改変してきた世界トップレベルの大富豪イーロン・マスクが最大の献金者となり、トランプの周りで飛び跳ねるくらいならまだしも、当選後は政権移行チームの部屋に入り浸り、まるで次期政権の陰の主役であるかのように振る舞っています。SNSが選挙の道具から出世を遂げて政権中枢を乗っ取るのかという姿を示している。

世界中でそういうことが起きていて、11月24日投票のルーマニアの大統領選では、事前には泡沫候補扱いだった親ロシアの極右政党の代表ジョルジェスクが、SNS一本に絞った選挙活動の結果、首位に躍進し、第2位との決戦投票に臨むことになった。当初は有力視されていた現首相は第3位で、決戦に残ることもできませんでした。

日本でも同様で、7月の東京都知事選での石丸伸二=元安芸高田市長の第2位食い込み、11月の兵庫県知事選での斎藤元彦=前知事の再選などまさかの事態が相次ぎ、「SNSを駆使すればどんな選挙にも勝てる」という“新常識”を語る者さえ現れています。

兵庫での立花孝志=N党党首の「当選を目的としない立候補」の場合は、選挙の妨害・撹乱と、その様子をユーチューブで面白おかしく配信して閲覧数を増やし収益を得ることが目的です。これは選挙でのSNS活用とは別次元の話で、こういうものも一緒くたにして「選挙とSNS」を語るのは間違いだと思いますが、それにしても、昨年のある調査によると、若い世代と老年世代のメディア生活は余りに大きく隔たっています。

    ネット  テレビ  新聞
20歳代 275.8分   60.1   0.5
60歳代 133.7    288.3   15.9

20歳代の若者が新聞を読むのは0.5分ということは30秒ですか……。それに対してネットには4.6時間を注いでいます。ということは、我々が昔ながらのオールド・メディアで何かを訴えたところで若い人たちには全く届きようがないわけで、その恐ろしいほどのギャップを立花のような人たちが上手く突いているのです。

そこで我々も政治に、選挙に、SNSを上手に活用することに習熟しなければならない。彼らと同じ次元で、デマやフェイクニュースを流して相手を撹乱し敵対を強めるといったことではなく、そもそもSNSは人間同士の繋がりを深め共感と協働を広げていくことを求めて創られてきた技術なのですから、そういう本源に立ち戻って、その醜い悪用の仕方に立ち向かっていく必要があると思います。

とは言っても、何をどうしたらいいのか私にも分かりませんが、面白いと思って見ているのは、例えばウィキペディアの創設者であるジミー・ウェールズが、イーロン・マスクのX改悪に対抗する形で「トラストカフェ」という、広告も、「いいね」ボタンも、寄付のお願いも、送金ボタンも何もない、ただ人間的信頼感だけを求めて人々が集うような新しい電子空間を生み出そうという試みを始めていて、世界中の人々の注目を集めつつあることです。

Mastodonや、日本で言うとMisskeyのような「分散型SNS」は、Xのように中央集権的に管理されているが故にオーナーの意向次第でカネカネカネへと過度に傾斜して行っても誰も逆らえないことに対する反動として現れてきたもので、こうした新しい発想と技術で真に人間的な共同体を電子的に形成していくことが可能なのかどうか、探究していくべき時が訪れています。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2024年11月25日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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