日枝氏は“中居事件”の責任から逃れることはできない
度胸と押し出しの強さ、男気の厚さで知られる日枝氏は、間違いなく求心力のある経営者だ。しかし、一強時代があまりに長く続くと、弊害が生まれる。老いた権力者にモノが言えない企業風土が定着して、統治能力が劣化してゆく。
#MeToo運動がきっかけとなり、伊藤詩織氏の性被害事件、ジャニーズ問題などを経て、それまで見過ごされがちだったセクハラや性暴力の問題が日本のメディアでも広く取り上げられるようになった。フジテレビもその一つだったはずだが、経営者たちの人権感覚はアップデートできていなかったとみえる。
今回の問題について、港社長は日枝氏に相談したことはないと断言した。しかし本当だろうか。会見に出席したフジテレビ、フジ・メディアHDのトップ5人のうちの一人は「組織の上意下達、タコつぼ化」と自社の企業風土について語っている。その最上位に君臨するのは日枝氏である。
フジテレビは数多くのトレンディドラマとお笑い番組をヒットさせ、女子アナウンサーを最初に“商品化”した。売り物は軽佻浮薄さだ。それを引き出すのに長けたバラエティー番組のMCが、視聴率を稼げる大物タレントとしてもてはやされ、いつしかテレビ業界で覇権を握っていく。テレビ局がMCのできる有名タレントにこびへつらう風潮が、“中居事件”を生んだのだ。
限られた電波の使用権を国から与えられている放送局が、その公共性を無視して、被害女性の人権よりも、視聴率を稼いでくれる人気タレントとの関係や自社の利益を守ることに躍起となった。日枝氏はその責任から逃れることはできない。
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image by: フジテレビ | UK in Japan- FCO, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons









