純粋に「国内で培養された人材だけ」で開発。中国製AI「DeepSeek」は何を証明したのか?

Delhi,,India-,25,Jan,2025;,Selective,Focus,On,Smartphone,Screen
 

1月20日のリリース以来、全世界に衝撃と影響をもたらし続けている中国製AI「DeepSeek」。その登場は一体いかなることを示唆しているのでしょうか。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では著者の富坂聰さんが、グーグルの元CEOも感嘆した中国のAI開発スピードの速さを改めて紹介。さらに「DeepSeek」開発メンバーたちの学問的バックボーンが示す事実について解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:中国発AIの衝撃 「DeepSeek」の秘めたる本当のパワーを日本は見誤っている

日本は見誤っている。中国製AI「DeepSeek」の秘めたるパワー

今週、世界を騒がせた大きな話題といえば、何といっても中国発の人工知能(AI)モデル「DeepSeek」だろう。

技術で先行するアメリカ発のAIに比べて「安価で高性能」だったことがよほどショックだったのか、米半導体大手・エヌビディアの株価を1日で17%も下落させ、1日で時価総額5,890億ドル(約91兆円)を吹き飛ばしてしまった。

世界が激しく反応したことで「DeepSeek」を初めて知ったという日本人も少なくなかったはずだ。しかし、本メルマガの読者は、すでに2週間前に「DeepSeek」の高い性能について取り上げてきたので、馴染みのある話題であったはずだ。

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メルマガ読者には復習になるが、少し振り返っておこう。

取上げたのは、バイデン政権の対中戦略の目玉としてAIをターゲットに対中輸出規制が行われてきたことを説明する流れのなかだ。中国のAI技術の現在地を端的に紹介するため、グーグルのエリック・シュミット元CEOの以下の言葉を引用した。

曰く、「以前は中国に(アメリカは)2年ほどリードしていると考えられてきた。しかし、ここ6カ月ほどで(中国が)追い付いてきた」だ。

シュミットの発言で驚かされるのは、中国AIの発展のスピードである。半年前には「2年遅れ」と考えられていた差を半年で縮めてしまったというのだ。

もし、今後も同じスビートで開発が進められてゆくとすれば、米中の技術差はどうなっていってしまうのだろうか。

もちろん市場での成否は技術だけが決めるのではない。現状を見る限り、情報分野で中国に依存することは西側の国々には抵抗も強い。単純に「DeepSeek」が世界を席巻してゆくという見通しにはつながらない。

だが、AIに由来する性能が多岐に及ぶことを考えれば、警戒よりも技術を優先せざるを得ない未来も必ずやってくるだろう。

前回までの2回、このメルマガで伝えてきたように、アメリカが中国との競争においてAIを重視し、その技術的優位を保つためバイデン政権が力を注いできたのが高性能の半導体へのアクセスを制限することだった。

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半導体製造で高い技術を持つ同盟・友好国と協力し、高い壁で囲い、中国に渡さない、いわゆる「スモールヤード・ハイフェンス」を実施してきた。

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