地球上で細菌が一番偉いと思えば謙虚になれるはずの人間
オールソンの書を読んでしみじみと思うのは、結局この地球の主人公は「細菌」なのではないか、ということである。1990年台になって判ってきたことだが、細菌は長い間、4つの門(主要系統)しかないものと思われてきたが、最新の所見では1,350の門の下に1兆もの種があり、それらはおよそ38億年前からこの地球上に存在してきたとされる。
その細菌をはじめとした単細胞生物が力を合わせて真核細胞を作り出し、それがやがて菌類、植物、動物を含む「生命」を生み出してきたのだとすれば、この地球上で今も続く“進化”を推進しているのは細菌をはじめ微生物であり、その神秘の営みを人類はようやく近頃、ゲノム解析などを通じて覗くことができるようなったばかりなのだろう。
西欧文明の終わりはつまり「人間主義(ヒューマニズム)」の終わりであって、あらゆる自然に対して人間の方が偉いという思い込みが崩れていく。当然にも、人間の中でアメリカ人が一番偉く、その中でもさらに自分が一番偉いと思い込むトランプ主義も崩れていく。
この地球では細菌が一番偉いと思えば人間は根本的に謙虚になれるはずで、それをゲノム解析などなかった古代から直感によって悟っていたのが「草木国土悉皆成仏」の思想である。今こそ日本人がその思想を掲げ、オールソンのような欧米の人たちと結んで、それこそ菌根菌ネットワークを編んでいけば、世界をひっくり返すことができるかもしれない。
(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2025年3月10日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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