「正直に思ったことを言っただけ」という無反省
北関東地域からの相談では、事故なのに加害行為をしたとされて教室から出て行けと言われているという内容であった。
詳しく聞くと、小学3年生のクラスで、真の加害側は真の被害者に「臭い」「メガネ猿」などと言い、周囲に同意を求めてからかったのだそうだ。
相談の母親曰く、息子は嘘をつけないので、正直に思ったことを言っただけなのだそうだ。
「悪気はないから、悪くはない」という主張だ。
百歩譲って悪気はなかったことは認めたとしても、クラスで身体が小さく喘息持ちで自己主張もあまり強くなく、人に怒ることはほとんどなく優しく寄り添うような女の子を「臭い」と因縁をつけ、「メガネ猿に似ているからモノマネをしてよ」とからかい、困っている様子を周りもわき込んで、指をさして笑う行為は、特定個人を中傷し傷つけていることには変わりはないから、これが悪い事なのだと教育する必要はあるだろう。
つまり、悪気はないにしろ誰かを傷つける行為をしてしまったのならば、悪い悪くはないという軸ではなく、反省し、二度とやらないように教えるのが親としての役割だろうし、教育指導の在り方なのではないか。
さて、この真の加害者は、困惑する真の被害者の様子がおかしいと面白がり、3年生はじめの2024年4月から夏休みが始まる7月半ばまで続け、結果として、夏休み明けの9月からこの真の被害女児は不登校になってしまった。
教育指導は「人権侵害」。我が子は悪くないと確信した母親
9月下旬に真の加害男児は担任と校長から校長室で教育指導を受けるが、母親はこれに抗議し、「人権侵害だ!」と校長に迫ったらしい。我が子の前で、校長らをタジタジにさせたことで、「我が子は悪くない」と確信したそうだ。
こうして助長したのか、それから数日後、真の加害男児は体育の授業終わりに被害女児に身体が当たって床に倒れさせてしまったそうだ。
詳しく聞くと、体育の授業は何かの体操をするというもので、男女は相応の距離をおいて授業を受けていたそうだ。着替えのタイミングや場所と異なり、本来接触することがないだろうところで、なぜか真の加害男児は担任の指示を聞き間違えて、相撲の張り手をするような形で被害女児を押したということなのだが、母親が言うには、これは事故で、わざとではないのだそうだ。
「故意ではないから責任はないと思うんです。その後私も学校に行って、その子(被害女児)にわざとではないのよ。でも、怪我をさせてしまってごめんなさい。捻挫くらいで済んでよかったね。と謝ったんです。でも、そのあと、その子(被害女児)のお母さんが学校に来て、私に言うんです。絶対に許しませんって。謝ったのに、許さないって。事故なのに!」(真の加害児童保護者の言葉そのまま)
民法709条にはこうある。
(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
よく加害行為をしたものは、かなり軽い気持ちで加害行為を行うようだが、事態が悪いと思うと「わざとではない」と言うのだ。
しかし、法律を基準として考えると、故意であろうが過失であろうが、責任の大小はあっても、責任は負うのである。
一方で、相撲の張り手のような形を自身でそのポーズを取ってみればわかるだろうが、地面に足を根のようにはって、腰を落とし、片手を突きだすわけだから、推すという意思が働かないとこの形にはなかなかならないし、周囲に他の児童がいる中で、ピンポイントで特に体の小さい被害女児に張り手をして倒れさせるというのは、事故だというのは無理があるだろう。
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