欧州が“プーチン接近”で四面楚歌、間近に迫る「ウクライナ終焉」…ゼレンスキーに救いの手を差し伸べる中国の狙い

 

ゼレンスキーが切ってしまった「タブー」とも言うべきカード

アメリカ政府としては“まず中東を落ち着かせることが先決だが、そのための手段は選ばない”という基本姿勢が存在し、軍事的なリソースも、外交的なリソースも今はイスラエルに集中投下する方針を実行に移していますが、見事にウクライナはそのとばっちりを受けることになっています。

その背景には、すでに複数の戦端への対応ができなくなっているアメリカ軍の体制があり、またバイデン政権下以降、ウクライナとイスラエルに迎撃システムのパトリオットを提供し続けたことで在庫が底をつき、優先順位を急ぎつけて対応する必要が出ているという事情があるようです。

ウクライナに約束していたパトリオットの供与を一旦キャンセルし、代わりにイスラエルのアイアンドームの強化のために用いるパトリオットをイスラエルに送ることに決めたのは、アメリカの対ウクライナ距離感と対イスラエル距離感の違いと重要度の認識のギャップを如実に示しているものと考えます。

そしてウクライナが何度お願いしても供与しなかったTHAADを、イランからの弾道ミサイルへの対応のためにアメリカがイスラエルに供与することを決めたのも、アメリカ外交戦略上の重要度の認識のギャップを示しています。

これでイスラエルの防衛力はさらに強化され、中東地域におけるイスラエル一強体制がさらに顕著になることに繋がりますが、それはアラブ諸国からの反発と緊張をただ高めるだけのネガティブな状況を作り出す方向に傾いているようです。

サウジアラビア王国をはじめとするスンニ派諸国は、微妙な距離感を保ちつつも、反イスラエルでイランとは協力体制にあり、イスラエル一強状態を是正すべく団結を強めつつ、“親米”国はアメリカに対して「これ以上、露骨なテコ入れをイスラエルに対して行うのであれば、基地使用のみならず、領空の通過も許可を取り下げることに視野に入れている」と圧力をかけ、何とか軍事的な対立に発展することなく、地域の緊張の鎮静化に努めようとしています。

この動きもまた、アメリカのウクライナ離れを加速させる方向に振れているようで、それゆえかどうかは分かりませんが、ゼレンスキー大統領はついにこれまでタブーと考えてきた対人地雷禁止条約(オタワ条約)からの脱退というカードを切り、“民主主義国家の代表”という看板を外し、「ロシアに自ら対応するには、手段は選べない」という姿勢を内外に示すことになりましたが、これは十中八九、ウクライナを国際社会において孤立させる方向につながり、国際社会における支援・支持をさらに失う方向に繋がる恐れが高まります。

ただすでにロシアの脅威に晒されるバルト三国やフィンランドなどは、今回のウクライナ同様に、対人地雷禁止条約からの脱退を表明し、国際法の遵守とプレゼンスの誇示よりも、自国領土主権と自国民の保護を選択し、「法の支配の遵守」という看板を外すことになりました。

この背後には欧州各国の支援の欠如と大幅な遅れ、そして口先だけの理想の繰り返しがあると見ていますが、今後、ウクライナは言うまでもなく、場合によってはフィンランドやバルト三国との連携も失われる恐れが顕在化してきているように感じます。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

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