欧州が“プーチン接近”で四面楚歌、間近に迫る「ウクライナ終焉」…ゼレンスキーに救いの手を差し伸べる中国の狙い

 

アメリカから中国への接近に切り替えつつある欧州

結束できない欧州は、ウクライナを結果として見捨て、フランスが首の皮一枚で何とか持ちこたえている以外は、中東における影響力もほぼ失っているという惨状を露呈しています。

一応NATO首脳会合ではアメリカとの距離を縮めるべく振舞っていましたが、トランプ大統領のほぼ言いなりになるしかなく、欧州がNATO内で持っていた矜持は見る影もない状況だったと見ています。

結果、アメリカと表面的には接近するものの、欧州として立ち続けるための柱をここにきて、アメリカから中国への接近に切り替えようとしているように見えてきます。

今週、あまり報じられていないのが不思議なのですが、中国の高官が次々と欧州各国を訪れ、協力体制の構築が図られていますが、これは何を意味するのでしょうか?

以前より何度か描いていた世界の3極化ですが、これまでは“欧米とその仲間たち”というグループで一つの極を構成して、確固たる基盤を築いていたのですが、ここにきて、欧州が中国に接近し、関係の改善に乗り出したことで、中国がロシアと主導する国家資本主義陣営との連携が強化され、欧州が中国側に傾くという現象が目立ってきています。

表立ってロシアと直接話をしているのはフランスぐらいですが、中国の背後にはパートナーとしてのロシアがおり、中国陣営との接近は、間接的にロシアとの関係修復に動いているとも解釈できます。

そしてそれは“欧州のウクライナ離れ”と“欧州のロシア接近”を表すことになるため、ウクライナの終末が近づいているのではないかとの懸念も、よく語られるようになってきました。

実際に調停グループ(Multilateral Mediation Initiative)の協議においても、完全に停止はしないものの、依頼内容の重点が明らかに中東に傾いているのを感じています。資金も軍備も、外交的な支援や働きかけも、それらが中東案件に集中し、他の案件に振り分けるリソースが枯渇し始めています。

このような状況に直面し、アメリカの全面的な協力もあり、コンゴ民主共和国(旧ザイール)とルワンダの間の地域的な紛争を停戦に導くというポジティブな仕事もできましたが、その半面、30年以上続く中央アフリカとコンゴ民主共和国内部の紛争への対処はまた優先順位が下げられ、スーダンの内戦への対応も、正直疎かになっています。そして忘れられがちなのが、ミャンマー内戦は今も継続中で、日々衝突が繰り返されて被害と犠牲が拡大していますが、こちらについても国際的な働きかけは開店休業状態です。

このような“国際的なコミットメント”の欠如の穴に素早く滑り込んでくるのが中国なのですが、最近(確か5月31日)に設立した国際紛争調停センターの宣伝広報活動も兼ねて、どのセンターを前面に押し出して、成果を積み上げようという狙いが見え隠れしていますが、正直なところ、中国の国際社会、特に紛争の調停の最前線での中国の影響力が高まっているのは事実です。

そしてその中国が今、狙っているのが、ウクライナです。欧州各国は口先だけ、そしてトランプ大統領のアメリカも、自らのsaving faceのために一旦ウクライナから離れる姿勢を示し、ゼレンスキー大統領が国内外で四面楚歌状態に陥りそうな時に、とんとんと肩を叩き、救いの手を差し伸べようとしているのが中国です。

以前にも、中国政府はロシアとウクライナの仲介を申し出て、一時期、ゼレンスキー大統領も習近平国家主席のプーチン大統領に対する影響力に期待して、その申し出を受けようとしたことがありましたが、その時にはアメリカのバイデン政権と欧州各国によって拒絶されて日の目を見なかったのですが、今回は欧米諸国の目が挙って中東に向いている状況下ですので、近日中に驚きの発表がなされるかもしれません。

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