混乱が広がる国際社会で唯一ベネフィットを獲得する中国
ロシア・ウクライナ戦争は、プーチン大統領が当事者であることと、ロシアにとって今すぐに戦争を止めるインセンティブがないこともありますし、ゼレンスキー大統領にとっても戦争が存在することが自らの存在証明になるため、口先ではいろいろと言いますが、戦争をやめることができない立場に追い込まれています。
そして当の中国も、表向きに認めることはないですが、ロシアの戦争を軍事的にも経済的にも、そして外交的にも支えているため、中国が仲介する形の停戦は、確実にロシア有利なものになり、中国がロシアに貸しを作る材料に使われるだけかと思います。
では欧米諸国の目が集中する中東情勢は解決するかと言われれば、正直なところ、私は非常に懐疑的です。
ここでも当事者であるイスラエルのネタニエフ首相は、戦争が行われているからこそ、戦時臨時内閣を組閣することが許可され、訴追も免れているという現実があることと、圧倒的な軍事力と経済力の威力を自らも自覚したことで、予てより願ってきた周辺国への影響力拡大と領土欲の拡大、そして憎きイラン駆逐を可能にする状況などの存在を、ホロコーストで味わった民族としての根絶に対する究極的な恐怖の除去と結びつけることで国内的な支持を得られる状況が目の前に広がる中、決してハマスが望むような恒久的な停戦を受け入れることはないですし、ましてや二国家共存という形態を受け入れるモチベーションもないため、ひたすら戦争を続けることを選択するでしょう。
一度乗りかかった船から降りて、コミットメントのバランスを勝手に変えるのはアメリカや欧州の得意技ですが、これまでもそうであったように、それは状況を悪化させるのに寄与し、かつ後始末をしないままでの退場によってさらなる憎悪を作り出すという現実が、また中東、ウクライナ、アフリカに広がりつつあるように見えます。
このような混乱が広がる際、唯一ベネフィットを獲得するのが中国です。来年には、アジア太平洋地域において、米軍を抜いて最強のプレゼンスを実現すると言われ、アジア太平洋地域における覇権の確立が進めると言われていますが、中国を警戒するアメリカの圧倒的なプレゼンスは、今、アジア太平洋地域を留守にしているため、成長と強国化のための十分な時間を得ていますし、中東・アフリカで広がる反欧米の波の背後で、協力関係を築き上げることで世界的な市場を構築しつつあります。
いずれ中東情勢が沈静化し、ロシアとウクライナの戦争も“終わる”時が来ると思われ、その後、新たな敵を探し、力による強制という一本やりを諦められないアメリカは中国にちょっかいを出してくることになると思われますが、その時に本当にアメリカは中国に対して、まだ“勝利”を収めることができるのでしょうか?
国際情勢の中で起こる優先度の移行は、すでにfragileな安定を根底から覆し、安易には解決できない混乱を世界全体に巻き起こす恐れがあると考えています。
そのような世界で私たちはどのようにして自らの身を守り、暮らしていくのでしょうか?
以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年7月4日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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