レッドラインを越えた米国とイスラエル。イラン攻撃が引き起こす「世界大戦ドミノ」という最悪シナリオ

 

すべて嘘だった「イランからの差し迫った脅威の存在」という疑念

このメルマガを書きながら、いろいろな情報を整理していますが、様々な分析を元に言えることはアメリカとイスラエルが今回の先制攻撃の理由として挙げた「イランからの差し迫った脅威が存在した」という“疑念”は、どうもすべて嘘だということです。

ジュネーブで米・イラン間の核協議の仲介をしていたオマーンの外務大臣や調停者が繰り返し話していた通り、開戦前でさえ、交渉は秩序の下で進展していたと認識しています。

ちなみに今回、米・イラン間で話し合い、アメリカが脅していた内容を見てみると、実際に10年前には合意済みの内容であり、イランやオマーンの調停担当者曰く、「アメリカは自らも決定に加わったはずの交渉合意内容をなぜ今、また蒸し返し、イランに対する攻撃を脅しとして示すのか、全く理解できない」とのことで、私も幻のジュネーブ行きの前にそのように考えていました。

“差し迫った脅威”など存在せず、イランがアメリカと再交渉する必要性もなかったはずです。そして“交渉”自体、アメリカがイランにケチをつけて、言うことを聞かせるための隠れ蓑に過ぎないことは明らかです。

実際に交渉の必要性を謳い、交渉の席に就きながら、アメリカはイランへの攻撃を昨年6月に行っていますし、今回も交渉が進展し、イランが折れて合意が近いという段階でその実を収穫する代わりに、またアメリカはイランへの攻撃を(イスラエルにそそのかされて)実施しました。

これを計画的な侵略と呼ばずして何と呼べばいいのか分からないほど、トランプ政権が出してくる正当化の根拠は陳腐なもので、明らかな嘘と分かるものですが、それを押し切って行動を進め、イスラエルが中東を支配して“大イスラエル”になり、地域における覇権を確実なものにするために、世界的な覇権の回復を目論むトランプのアメリカが力を貸すという構図が具現化されたのが、今回のイランへの破壊的な攻撃だと考えます。

その背後にあるのが、駐イスラエル米国大使のマイク・ハッカビ─が明言した「中東はすべてイスラエルのものであり、神が彼らに中東を与えたのだ。アメリカはその実現のために力を発揮しなくてはならない」という内容なのですが、ホワイトハウス内で彼のこのような発言を叱責するものは誰もおらず、欧米諸国もこの発言について特に懸念を表するようなことはしていません。キツイ言い方をすれば、欧米諸国もイスラエルに言いくるめられているのかもしれません。

イランによる反撃が予想以上に強烈であることと、軍事専門家でさえ初めて見ると言われるsuper sonicの弾道ミサイルが見事なまでにイスラエルの各都市に着弾する様を見て、そして報復の矛先がEUのメンバーでもあるキプロスにも及んだことで、欧州各国はやっと重い腰を上げたと言えますが、不快感を示しつつも、トランプ政権とイスラエルの蛮行を止める行動を取ることはせず、ただ「トランプ大統領にはイランの今後についての明確なプランがない」(ドイツのメルツ首相)と嘆くだけで、抑止力としては機能しない“役立たずな”姿を晒しています。

ウクライナへの対応でも既に露呈していますが、欧州は“べき論”を振りかざすのみで行動がとれず、アメリカに苦言を呈してみてもトランプ氏の動きを止めるだけの力はありません。キツイ言い方をすれば、欧州はすでに米国の属国に成り下がり、アメリカのグローバルな覇権回復と維持のための装置に過ぎないと言えます。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print

  • レッドラインを越えた米国とイスラエル。イラン攻撃が引き起こす「世界大戦ドミノ」という最悪シナリオ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け