誰もアメリカに支配される世界を望んでいないという現実
欧州各国のリーダーの中で、まだ麻痺していないと思うことができるのは、イタリアのメローニ首相くらいでしょうか。
彼女は今回の壊滅的なイラン情勢を前に「中東での爆発的な状況やキプロス上空のドローンは、別々の紛争ではなく、国際法の破壊の直接的な結果です。すべてはウクライナで始まりました。国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアが、隣国の国境を冷酷に侵害し、世界全体にルールはもはや適用されないというシグナルを送ったのです。(中略)残念ながら、ヨーロッパでの戦争はすでに始まっており、これらの出来事を“遠いもの・関係のないもの”と考えるのは非常に危険な幻想である、というのが現実です。ウクライナで破壊された法の支配を回復しなければ、混乱はますます悪化するばかりです」と嘆いていますが、この声に他の欧州のリーダーたちが呼応しないと、戦争はヨーロッパを確実に飲み込み、各地の紛争が連鎖して起こる世界大戦に突入することになります。
この起こり得る世界大戦を、アメリカはたとえ自国中心的な形であっても終結に導けるかどうかと考えてみた際に、大きな懸念と疑念が湧いてきます。
もし今、起き始めていると考える世界大戦が核戦争になったら世界の終焉を意味しますが、それを仮に防ぐことが出来たとしても、米国にはもう世界を運営するだけの経済力も技術的な優位もなく、中国の台頭を受けて、世界的な軍事力の優位性も疑問符がつく状態です。そして誰もアメリカに支配される世界を望んでいないのも現実です。
今回のイランへの攻撃の主目的は“体制転換(regime change)”で、ハメネイ師の殺害後、繰り返し「残った体制派による親米への転換」をトランプ大統領は謳っていますが、その可能性はゼロに等しく、1億人の人口を抱え、かつ旧ペルシャ王国の中枢をなす国として5,000年以上の歴史を誇る国ですので、遠く離れた“ただの世間知らずな”国からの代理人によって支配できる国ではありませんし、そのような姿勢は確実に中東アラブ諸国がいまだに恥と感じ、“欧米に騙された”と強く感じる歴史的な感情に火をつけて、結束して反米・反イスラエルに動くことが目に見えています。
今回のイランへの作戦は、確実にレッドラインを越えるものであったと言えますが、トランプ大統領は世界戦争と反米の連鎖の形成への導火線に火をつけてしまいました。
短期的にはトランプ大統領のアメリカとネタニエフ首相のイスラエルは軍事的な勝利を収めることになるでしょうが、どちらも決して無傷での勝利はなく、戦いが長引くにつれ、イランはもちろん、イランと一線を交えることになったアラブ諸国、そしてその背後にいる挑戦的なNATO加盟国で地域のパワーハウスであるトルコ(かなりの反イスラエル)、トルコの同胞であるアゼルバイジャンや他のトルコ系の国々が連鎖し、そこにロシアと中国が接近して、米・イスラエル陣営への攻撃を始めることになると考えられます。
また、通常は中立または静観を保つはずのインドは、3月4日・5日に起きたインド洋での海軍演習に参加していたイランの艦船を米軍の潜水艦が魚雷で沈め、80名超の死者を出した事件は、自国のsphere of influenceにおいて行われた蛮行であり、地域のリーダーたるインドの顔に泥を塗る行為および挑戦行為・威嚇と受け取られる可能性が高く、そうなるとインドが反米の陣営に与することも大いに予想できる展開となります。
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ









