「男系男子のみ」の厳しいルールだけを維持する構造的な矛盾
今回の皇室典範改正への動きは驚くべきスピード感で推移している。麻生氏が号砲を打ち鳴らしたのは今年4月20日、麻生派の総会でのことだった。
「皇族数の確保は先送りにできない喫緊の課題だ。今国会中に必ず成し遂げなければならない」
麻生氏がもくろんでいる皇室典範の改正内容は主に2点ある。
(1)女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する。
(2)皇統に属する男系男子の養子縁組を容認する。
「皇族数確保を図ることが喫緊の課題」として2021年に有識者会議がまとめた報告書の中身と同じだ。(1)は女性皇族に配慮するとともに皇族数のさらなる減少を避けるためだろうが、どちらかというと麻生氏が重視するのは(2)である。
1947年に皇籍離脱した11の旧宮家から、「男系男子」を養子に迎え皇族に加えるという案だ。週刊文春6月4日号によると、旧宮家の若い世代の未婚の男系男子は、少なくとも12人いるという。もちろん、普通の民間人として暮らしてきた家庭の子弟たちだ。近年は皇族との交流もあまりなくなっている。
いまさら、皇族になれと言われても困ると思うのだが、なかには国家的使命感に駆られる人もいるかもしれない。しかし、いきなり見たこともない人が現れて、国民が受け入れられるかとなると甚だ疑問だ。それでも、旧宮家に頼らざるを得ないほど危機的状況にあるということだろう。
皇室典範改正への動きは国会の情勢にも大きな影響を及ぼしている。麻生氏が国民民主党をも巻き込んだ「大連立」に近い枠組みを模索している背景には、皇室典範の改正という「歴史的事業」を「広範な国会合意」として成立させたいという思いがある。保守から中道までが賛成したという形を作り出し、反対勢力を孤立させるのも大きな狙いだろう。
現にその兆候は見えている。もともと立憲民主党は養子案に慎重だった。ところが、衆院で公明党と合流した中道改革連合は養子案を容認する方針を決めた。これに対し、元立憲代表で先の衆院選で落選した枝野幸男氏が、SNSに「天皇制を破壊しかねない旧皇族養子案を認めるなら、お付き合いは仕切れません」と投稿するなど、足元から異論が噴出している。
たしかに、何十年も前に皇籍を離れた家系の人物を、今さら税金で支え、特別な存在として迎え入れることに国民の納得感を得ることはきわめて難しい。下手をすれば「国民とともに歩む皇室」という信頼関係を損ない、結果として天皇制そのものの正当性に対する不信感を生みかねないのだ。
そもそも、なぜそこまで皇位継承資格を「男系男子」に限定することに固執しなければならないのだろうか。そのルールが、側室制度を前提とし、明治になってつくられたものであるにもかかわらずだ。
明治政府は、西洋の君主制をモデルにしつつ、日本固有の「万世一系」という神話を強化するために、「男系男子のみ」「嫡出子優先」といった厳格なルールを明治22年制定の旧皇室典範で固めた。同時に、近代国家としての体裁を整えるため、一夫一婦制を導入し、側室制度を廃止した。
つまり、男系継承を維持するための装置である「側室」を捨てて、「男系男子のみ」という厳しいルールだけを維持するという、構造的な矛盾を抱えたまま近代が始まった。これが現在の継承者不足問題の出発点となっている。
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