「中東全体の縮図」とも言うべき国際情勢におけるレバノン問題
まず、米・イラン間の協議について見てみましょう。
いきなり結論から申し上げると、【アメリカとイランとの協議は和平交渉】ではありません。
今週も米国とイランの協議が継続しています。報道を見ると、「核合意復活か」、「対イラン制裁緩和か」といった見出しが並びます。
しかし実際には、双方とも包括的合意を目指しているわけではなく、現在両国間で行われているのは、“和平交渉”ではなく、【危機管理のための交渉】です。
これは紛争調停の現場でもよく見られる現象です。当事者同士が信頼し合っていない状況下でも、“戦争コストが高すぎる”と判断した場合、限定的な対話チャネルだけは維持されますが、現在の米イラン関係もまさにそれです。
双方とも相手を信用していませんが、交渉が消滅することの危険性は理解し、交渉が失敗した場合の代償が大きすぎるから交渉を続けています。
米・イラン間は非常にデリケートな状況下で交渉を続け、共に何とか互いの面子を潰すことなく矛を収めるための出口を探っているわけですが、そこに横槍を入れて、“停戦”の成立および和平の実現を阻んでいるのがイスラエルの行動です。
表面上は“停戦”が成立しているガザ地区への攻撃と、ハマス掃討を目標に掲げた“対テロ戦争”の継続はアラブ諸国を苛立たせていますし、水面下で着々と進めているヨルダン川西岸地区におけるユダヤ人入植地の拡大は、アラブ諸国はもちろん、アメリカや欧州各国にとってもレッドラインを越える許容できない行動であり、地域における緊張を高めています。
しかし、決定的なのは、アメリカの仲介の下、成立していたイスラエルとレバノンの停戦合意に違反する形で、イスラエルがヒズボラ掃討を目的に掲げて、レバノン領内に対する攻撃をエスカレートさせていることで、【レバノンにおける停戦を含むすべての戦争・戦闘の停止】を停戦と和平、およびホルムズ海峡の封鎖解除の条件として明確に打ち出しているイランを刺激し、米・イラン間での協議・調停を非常に難しい状況に陥れています。
トランプ大統領から叱責されているネタニエフ首相とイスラエルですが、ネタニエフ政権が「停戦合意内で約束されたヒズボラの武装解除が遅々として進まず、イスラエルの国家安全保障を脅かしているから」と断じて継続しているレバノンへの軍事攻撃はイスラエル国民の大多数に指示され、かつ「米・イラン間での協議はイスラエルに安心をもたらさない」と国民の多くがアンケートに答えている現状に鑑みると、10月に総選挙を控え、自らの政治生命がかかるネタニエフ首相としては、国民からの圧倒的な支持を受けて、レバノンへの攻撃を続け、かつイランとの緊張を維持する必要があると考えているようです。
ところで、国際情勢における“レバノン情勢・レバノン問題”とはどのような性格のものなのでしょうか?
一言で表現すると【レバノン問題は中東全体の縮図】というようになります。
多くの場合、特に報道では「イスラエル対ヒズボラ」として、単独イシューとして扱われがちですが、レバノン情勢を巡る実情はもっと複雑です。
レバノン問題の背後には、イラン、シリア、イスラエル、アラブ諸国、米国、ロシアが存在し、さらに東地中海の天然ガス開発問題も絡んで、トルコやキプロス、そしてギリシャもステークホルダーとして存在しています。
つまり現在のレバノン情勢は【イスラエルとレバノン間の単独紛争】ではなく、【中東問題全体の縮図】として複次的に捉える必要があります。
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