見誤りがちな「銃声を止めること」と「紛争を終わらせること」の違い
仮にイスラエルとレバノン間での停戦が成立したとしても、イスラエルが長年抱える国家安全保障への懸念や“生存のための脅威の払拭”や、レバノンやシリア、エジプト(そして恐らくヨルダンも)が抱えるイスラエルとの領土問題、そしてもちろんガザ問題を含むパレスチナの存在に絡む“構造的要因”に加え、レバノンが長年苦しむ政治的な不安といった内政的な課題が解決されなければ、これまでに何度も経験してきたように、紛争は何度でも再燃してしまいます。
そこにイスラエルの“特別な同盟国”としてのアメリカの利害や、アフリカ大陸及びMENAと呼ばれる中東北アフリカ地域への再進出の足掛かりとしてシリア(やレバノン)を用いたいと願うロシアの思考、イスラエルと自国の緩衝地帯としてレバノン、シリア、パレスチナなどを使いたいアラブ諸国、そしてイスラエルと緩く閉じ込めたい(包囲したい)エジプトの思惑、そしてこの地域に新たに影響力を及ぼしたい中国、さらにはトルコの存在や、もちろんイランの思惑も複雑に絡み合っていて、簡単には解きほぐすことができない複雑な状況がそこにはあります。
これは私が長年、紛争調停の現場で見てきた現実でもあります。銃声を止めること(つまり戦闘停止)と、紛争を終わらせることは違いますが、私たちはしばしばこの違いを見落とし、同じミスを繰り返し、悲劇が繰り返されることになります。
地中海の対岸で情勢が不安定化する東アフリカ地域ですが、こちらでもまた静かに、でも確実にデリケートな安定の崩壊の足音が聞こえてきています。
【静かに危険度を増す東アフリカ】という観点で、注目したいのが東アフリカ地域です。
国際社会の関心(国、私たち市民など)は中東やウクライナ、そして台湾海峡における中国のプレセンスに集中しています。
しかし、今、警戒すべきは“世界が注目していない場所”であるアフリカ地域だと考えています。それはエチオピア、エリトリア、ジブチ、スーダン、エジプト、コンゴ民主共和国、ルワンダ、ケニア、タンザニア、そしてソマリランドなどを巻き込む勢力争いと資源争いに起因する“大戦争”の火種です。
経済成長が著しいエチオピアでは近く総選挙が予定されており、アビー首相が率いる与党繁栄党が選挙戦をかなり優勢に進めていると伝えられています。
アビー首相になってから顕著なのは、外資を積極的に招き入れ、IMFの支援の下、構造改革を進めていて、結果として年率9.2%の実質経済成長率を誇る状態になっていますが、その背後で彼の出身部族であるオロモ族優遇の体制が許可され、アムハラ州での民衆蜂起や、ずっと続くティグレイ州との内戦が再燃しているだけでなく、反アビー派の州や部族を選挙から排除し、国内の不安定化が加速しています。
民主化よりも経済優遇の方針は、国内の不安定化を招くだけでなく、周辺国との緊張の高まりにも繋がっています。
例えば、アビー首相がノーベル平和賞を受賞するきっかけとなったエリトリアとの和平も、エチオピアがエリトリアに港湾へのアクセスを認めるように一方的に要求し、不実施の場合には紛争も辞さないとの強硬姿勢を示したことで崩れ始めていますし、隣国ジブチとの良好だった経済関係もおかしくなり始めています。
また、Great Renaissance Dam(ナイル川)の水利権を巡ってエジプトとスーダンとの三つ巴の戦いが継続していることや、ティグレイ紛争で多くの難民がスーダンに逃れ、それがまたスーダンでの内戦を複雑化しているという“現実”も、東アフリカ地域の不安定化要因として挙げられます。
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