■板挟みの立場に置かれている「仲介役」オマーン
トランプ政権の発表に先立ち、イランの革命防衛隊の報道官は8月23日、「経済戦争を含むあらゆる敵対行為に備え、対応策を準備している」と表明しました。さらに「新たな制裁は米国が自らこれまでの軍事作戦の失敗を認めるものだ」とも主張しています。
イラン国内では、通貨リアル安やインフレが長期化する経済制裁の影響で続いていますが、その隙をついて中国などへの原油輸出も続けてきました。
今回の新制裁がどこまで実質的な打撃を与えるのかは、正直なところ不透明です。
イランのSNSC(最高安全保障委員会)のレザイ事務局長は8月22日、米国の新たな制裁に加担する国は「敵とみなす」と警告し、封鎖状態が続くホルムズ海峡から「一滴の石油も出さない」と国際社会を揺さぶりました。
ペゼシュキアン大統領も8月21日、首都テヘランでの会合で「我々はいじめに屈しない」、「今日こそ戦争を終わらせるべき時だ。世界はイランの米国に対する勝利を認めている」と強気の発言を続けています。
The Financial Timesは、この発言についてもう一段踏み込んだ観測を伝えています。トランプ大統領が経済的な圧力を強める中、イラン内部では紛争継続をめぐる議論が起きているというのです。
革命防衛隊など軍部は圧力への抵抗を訴える一方、ペゼシュキアン大統領や対米交渉を率いるガリバフ国会議長らは、国民の苦境がこれ以上深刻化することを懸念しているとされています。
「強気の言葉の裏側で、指導部の足並みが必ずしも揃っていない可能性がある」
これは交渉相手を見極める上で、非常に重要な手がかりです。相手が一枚岩でないとき、外からの圧力は指導部内の対立を先鋭化させる場合もあれば、逆に外圧への反発でまとまりを取り戻させてしまう場合もあります。
どちらに転ぶかは、今後のイラン国内の力学次第でしょう。
こうした構図の中、当のホルムズ海峡はどうなっているか。
オマーンが仲介役として動いています。実はオマーン外務省は8月21日の時点で、バドル外務大臣がアラグチ外相と電話会談し、封鎖状態が続くホルムズ海峡の開放に向けた調整や対話の環境整備について協議したと発表していました。
もっとも、イランは海峡開放の条件として、これまでの戦闘で生じた被害の補償や制裁解除を米政権に求めるなど、強気の姿勢を崩していません。
トランプ大統領は8月17日、FOXニュースで「オマーンが米イランの交渉を邪魔したら徹底的に攻撃する」と述べ、米国の意に沿わない取り決めを結ばないよう、あらかじめくぎを刺しています。
仲介役のオマーンは、米国からイランの海峡支配に加担しないよう圧力をかけられる一方、イランとの対話も続けなければならないという、まさに板挟みの立場に置かれているわけです。
そうした中、8月25日には、オマーンのバドル外相がテヘランを訪れ、アラグチ外相と暫定航路の共同設置や機雷除去の共同プロジェクトについて協議しました。
「実務的かつ協力的な理解」を深める方針では一致したものの、恒久的な航路管理は「適切な時期」に決めるとされ、具体的な結論は先送りされています。
この記事の著者・島田久仁彦さんの新創刊メルマガ









