とんだ藪蛇。安倍元首相「国葬」決定で岸田首相が踏んだ“虎の尾”

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9月27日に日本武道館で行われることが決定した安倍元首相の国葬を巡り、賛否両論が噴出しています。このような状況となることは容易に予想できたはずの岸田政権は、なぜ安倍氏を国葬で送る決断を下したのでしょうか。今回のメルマガ『 高野孟のTHE JOURNAL 高野孟のTHE JOURNAL 』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、岸田首相の「即決即断」を藪蛇とした上でその理由を解説。さらに海外メディアの報道を紹介しつつ、国内外に良からぬ影響を与えかねない国葬決定に対して危惧を示しています。

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※本記事は有料メルマガ『 高野孟のTHE JOURNAL 高野孟のTHE JOURNAL 』2022年7月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に 初月無料のお試し購読 初月無料のお試し購読 をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

藪蛇となった岸田首相主導の「国葬」決定/岸・安倍一家3代の統一教会との癒着に向けられる世間の冷ややかな目

安倍晋三元首相を「国葬」に付そうという岸田文雄首相の珍しく独断専行・即断即決的な決定は、どうも拙速だったようで、週刊誌だけでなく一般紙も含めメディアは一斉に、岸信介元首相以来3代に及ぶ統一教会=国際勝共連合との深い癒着関係の探究に焦点を合わせている。それを見て、最初は遠慮がちに様子見していた言論人たちも次第にはっきりと疑念を表明するようになり、野党も立憲民主まで含めて「反対」姿勢に傾いている。国会前では市民の反対デモも起きていて、まさに藪を突いて蛇を出すの有様となった。

放っておけばよかったのに

推測するに岸田は、参院選で大勝を得た高揚感の中で、事件現場に設けられた献花台に長蛇の列が出来たり、ブリンケン米国務長官が早速飛んで来たのをはじめ各国首脳から弔意が寄せられたりした様子を見て、「これは行ける!」と判断したのだろう。官邸を通じて内閣法制局に「国葬」を打てるだけの何らかの法的根拠を見出すよう指示した。

安倍は自民党にとっても極めてアンビバレント(両義的)な存在で、確かに首相としての在任期間最長という記録は一目も二目も置かざるを得ないが、それでいて改憲も拉致も北方領土もアベノミクスも口数ばかり多い割には何の成果もないという虚しさは覆い難く、それどころかモリ・カケ・サクラなど答弁が嫌で国会も出来るだけ開かないようにするという卑劣さも被さって、まあウンザリしながらも腫れ物扱いで付き合ってきたというのが本当のところだろう。本人にもその党内の空気は痛いほど分かるから、わざわざ最大派閥の会長に就いて現役性を誇示し、核共有への踏み込みや防衛費2%目標などをあたかも大長老が現内閣に“指示”を下すがごとき口調で公言したりして、必死で体面を繕ってきた。

その危ういバランスを思えば、こんな不幸な亡くなり方をしたとはいえ大騒ぎせず、せいぜいが大平正芳や岸信介など多くの首相経験者の時と同じ「内閣・自民党合同葬」程度にして粛々と済ませればよかったのだ。ところがこれを政権浮揚の一大行事に仕立ててやろうかという岸田の政局思惑が絡んで「国葬」という無理な設定に突き進んだ。

どこぞの川柳欄に「国葬に閻魔が呆れる嘘の数」という秀句があったが、まさに岸田は閻魔まで起こしてしまったのである。

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