元少年A「絶歌」出版騒動で注目される「サムの息子法」とは?

 

では、この法律と同じような法律を日本でも制定することができるのでしょうか? 表現行為を規制する法律になりますので、憲法が重要な権利として保障する、表現の自由(憲法21条1項)との抵触が問題となります。

1997年にニューヨーク州で成立した当初のサムの息子法は、連邦最高裁で違憲判断が下されました。被害者への補償を確実にする・犯罪者が犯罪から利益を受けないようにするという点などは肯定できるものの、犯罪そのものを言及したわけではない表現活動についてもサムの息子法が適用されるのは規制として広すぎて、表現の自由に対する侵害であるというのがその理由です。違憲判決を受けて、サムの息子法は没収の対象を犯罪行為に直接関連する収益に限定するという改正が行われました。

日本においても、被害者への補償を確実とすることと等を目的とした上で、没収する対象を厳密に定めれば、必要以上に表現の自由に対する侵害にならないと考えられますので、制定することは可能かもしれません。

2011年に犯罪を犯した男性が逃亡生活を手記にして、印税1,100万円を得て、税引き後の金額を被害者の遺族に渡そうとしましたが、被害者の遺族は犯罪をネタにして金儲けをしていると嫌悪感を明らかにされ、受け取りを拒否されています。

遺族の方を苦しめるような手記の出版は、たとえ補償のためという気持ちから行った行為だとしても、控えるべきではないでしょうか。

image by: Shutterstock , Amazon

『知らなきゃ損する面白法律講座』
わかりやすくて役に立つ弁護士監修の法律講座を無料で配信中。誌上では無料で法律相談も受け付けられます。
≪登録はこちら≫

 

少年A 矯正2500日全記録 (文春文庫)

 元東京少年鑑別所法務教官の著者が綴る矯正の記録

print
いま読まれてます

  • 元少年A「絶歌」出版騒動で注目される「サムの息子法」とは?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け