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Amazon一強時代は終焉へ。「Google」がじわじわとEC界を侵略している=シバタナオキ

eコマースはAmazonの一強とも言える状況ですが、唯一の対抗馬としてGoogleが浮上しています。買い物の入口を両社が取り合っている状況について掘り下げます。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)

※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2018年4月17日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:シバタ ナオキ
SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。

入口を制する者が買い物を制す。Googleの「アレ」が急成長中?

Amazon vs Googleの「買い物の入口」争奪戦

今回は、eコマースにおいて買い物の入口をAmazonとGoogleが取り合っている、という内容を詳しく掘り下げていきます。

「Amazon Takes 49 Percent of Consumers’ First Product Search, But Search Engines Rebound」という記事を詳しく見てみましょう。

この図にある通り、オンラインで買い物をする場合、49%のユーザーがまずAmazonに行き、そこから商品を探し始めます

一方で35.5%のユーザーは、Googleなどの検索エンジンで商品を検索し始めることになります。

オンラインで物を売ろうとしているPC店舗から見ると、このトレンドを正しく押さえることは非常に重要です。

なぜなら、ユーザーがどこで商品を探し始めるのかに応じて、自社の商品をAmazonに出品する必要があるのか、あるいは自社のECサイトにGoogleからユーザーを獲得していくのが正しいのか、というのが大きく変わってくるからです。

このGoogleとAmazonの買い物の入口争奪戦は、過去数年にわたって何度も繰り広げられてきていますが、最近ではGoogle Shopping Adsによって少しずつGoogleのシェアが上がってきているというデータもあります。

今日はレポート「The Rise of Google Shopping」などを参考にしながら、Google Shopping Adsの現時点での重要な数字を詳しく見てみたいと思います。

Google Shopping Adsとは

Google Shopping Adsとは、いわゆるProduct Listing Ads(PLA)のことです。

通常のGoogleのアドワーズでは、ユーザーが検索すると、テキストだけの広告が結果の上や右側に表示されます。

一方でGoogle Shopping Adsは、テキストだけではなく、商品の画像や値段まで表示される広告になります。

この図でわかるように、通常のGoogleのアドワーズと比べて、よりリッチな広告が表示されます。

Next: パフォーマンスはテキスト広告以上。スマホではさらにPLA利用率が高い



EC店舗のGoogleへの広告出稿は76.4%がPLA

ではEC店舗は、Googleに広告出稿する際に、Google Shopping Adsと通常のアドワーズに、それぞれどの程度の割合で広告を出稿しているのでしょうか

この図によれば、広告出稿額ベースでは76.4%が Google Shopping Adsクリック数で見ると85.3%が Google Shopping Adsと出ています。

この数字だけを見ると、Google Shopping Adsの方が広告出稿額に対するクリック数が多いので、広告主にとってはより効果が高い広告であると言えるでしょう。

スマホではPLAへの予算配分がさらに大きく

スマートフォンの面だけに限った場合の数字を見ています。

スマートフォンに限ると、アメリカでもイギリスでも、全体に比べて広告出稿額もクリック数もGoogle Shopping Adsの割合が大きくなっていることがわかります。

ECカテゴリーごとのPLA比率

次にeコマースのカテゴリー別も見てみましょう。

カテゴリーごとにばらつきがありますが、全体的に Google Shopping Adsに偏った広告出稿をしていることがよく分かります。

Google Shopping Adsの割合が80%を超えているのはホームアンドガーデン、家電、ファッションアパレルの3つのカテゴリーになっています。

これらの3つのカテゴリーでは、特に商品の画像や値段が見えることが重要だと言えるのではないでしょうか。

これをさらにデスクトップとスマートフォンで分割して見てみます。

濃い青色がデスクトップのテキスト広告、濃いグレーがデスクトップの Google Shopping Ads、薄い青がスマホのGoogle Shopping Ads、薄いグレーがスマホのテキスト広告になっています。

個人的には、ホーム&ガーデンとファッションアパレルの2つにおいて、スマートフォンよりもデスクトップにおける広告出稿額が多いことに驚きました。

Next: Googleは「Amazonのひとり勝ち」からEC店舗を救えるのか?



Google Shopping Adsは「Amazonひとり勝ち」からEC店舗を救えるか?

現在の北米でのeコマースのマーケットを見ると、eコマース全体の成長のうち、70%がAmazonによるものであると言われており、いわばAmazonのひとり勝ちの状況になりつつあります。

サードパーティのEC店舗から見ると、非常に辛い状況が続いているとも言えます。

これらのEC店舗は、当然Amazonにサードパーティーとして出品することもできるわけですが、Amazonがひとり勝ちしている状況だと、手数料などの点で圧倒的にAmazonに有利な状況で、どんどん自分たちのマージンが下がっていくことにしかなりません。

そういった意味で、PC店舗から見ると、このGoogle Shopping Adsのように、Amazonに対抗し得るだけの規模感を持って自社サイトにユーザーを集客してくれるチャンネルが登場してくるのは、非常に望ましいことになります。

そういった意味で、Google Shopping Adsが、EC店舗にとってほぼ唯一のAmazon対抗馬と言えるのではないでしょうか。

image by:Maglara | Eric Broder Van Dyke / Shutterstock.com

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『決算が読めるようになるノート』 2018年4月17日号『AmazonのECシェア拡大を食い止めるGoogleの「アレ」が成長中』より抜粋
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