美貌の勝利ではない。大塚家具騒動を数字で分析してわかったこと

 

さてこの時期の既存店舗の昨年対比売上が以下の通りです。

月次情報 店舗売上高 前年同月比

消費税の駆け込み需要が大きかったこともあり、2014年1月は106%、2月は104%、3月は133%と業績は上向いておりました。ところが消費税の反動も大きかったのでしょうか、5月の昨年同月対比が89%と大きく減少します。さらに6月、7月と83%という数字となり、明らかに異常な売上の減少が起きており、この時期に何かが起きている訳です。

そして事態は動きました。2014年7月23日の発表で会長となった勝久氏が代表取締役会長兼社長となり、久美子氏は取締役に降格となります。2009年3月に社長に就任し経営に取り組み、勝久会長体制もそろそろ自分達の時代へと考えていた頃ぐらいにあたるのでしょうか。会長から待ったがかかった形での久美子社長解任劇となります。

さて業績の方はというと5月の昨年同月対比が大きく減少している中、5月2日に第一四半期の業績発表をしています。大塚家具は12月が決算なので1月~3月末の業績が第一四半期となる訳ですが、1、2、3月は業績が良かったので、第一四半期の発表は期初計画通りの発表となる訳です。ところがこの発表が出ている頃、社内ではあきらかに異変が起きております。5月、6月の数字で勝久氏が久美子氏の体制では駄目だと判断したのでしょう。前出の通り7月23日に社長変更となりました。

そして勝久会長兼社長体制となった7月30日に第2四半期の業績予想の修正を発表します。ここで注目するところが、第1四半期の発表では予定していなかったのですが、第2四半期の発表で有価証券売却益の3億230万円を盛り込みます。これにより前回5月2日に久美子社長体制で発表した通期予想では純利益が3.79億円だったのに対して勝久会長兼社長体制となったら7.42億円に上方修正されたという訳です。投資家に向けてなのか社内に向けてのアピールなのかはわかりませんが、有価証券の売却で当期利益を上げるなんてのは、久美子社長でも誰でもできる訳で、明らかな自己アピールなのですね。

さて勝久会長兼社長体制と変わりましたが、5月以降に前年同月売上対比は、いい月で96%、悪い月では89%と苦戦が続きます。そんな中9月24日にはこんな発表がありました。「厚生年金基金の特例解散に伴う特別損失の発生」の発表です。

これは大塚家具も加盟する「東京都家具厚生年金基金」という家具関連の業界で働く従業員向けの厚生年金基金なのですが、安定的な運用収益を確保することが困難な状況となったことから同基金は解散することとなりました。これにより平成26年8月末日時点の同基金全体の積立不足額に大塚家具の負担割合を掛けると5.7億円の負担額となります。結果、同基金解散に伴う損失見込額とし厚生年金基金解散損失引当金として5.7億円を計上しなくてはなりません。

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