排ガス不正か、クルマの未来か…新聞各紙は東京モーターショーをどう見たか?

※写真はイメージです
 

【毎日】VWの方が大事でしょ!

【毎日】は、「東京モーターショー」に関しては、各紙の中で一番小さな扱い。7面に800字ほどの記事とトヨタのレクサスから出展された自動運転の燃料電池車写真のみ

記事中には、トヨタの出展した自動運転車が高速道路を想定した自動運転が可能であること、2020年前後に発売を検討することなど。ホンダはトヨタ車の性能を上回る航続距離の燃料電池車。その他、日産自動車、三菱自動車、富士重工業、マツダなど。

1面と6面にはVWの経営に関する記事。1面は「VW2220円赤字転落」との見出し。7~9月期の決算発表で、前年同期に4000億円近い黒字だった同社が、大幅な赤字に陥ったことを伝えている。リコール費用など、67億ユーロの引当金を損失計上したことが響いたかたち。ミュラー会長は、規模拡大を追求してきたこれまでの路線を改め、「質的な成長を目指す」と語っている。

6面の記事は、その経営方針の転換についての記事。見出しは「VW、拡大路線を転換」「不正の影響 今後本格化」。決算の結果は、排ガス不正に伴う損失の大きさを示すとともに、中国市場の原則によって急成長にブレーキが掛かりつつあることを浮き彫りにしたという。

排ガス不正の損失がなかったとしても、VWの業績は0.7%減の前年割れ。そして不正の影響本格化はこれから。全世界で1100万台もある不正車への対応をしながら経営改革を進めるのは容易ではないこと、研究開発費を年間10億ユーロ削減するが、各メーカーが環境技術や自動運転の技術で鎬(しのぎ)を削っているときに長期的な競争力低下を招きかねないことなど、経営再建の苦しい条件が次々と摘示されている。

uttiiの眼

《毎日》の感覚はある意味で正常だ。VWの経営危機という大問題があるときに、東京モーターショーを大きく取り上げて先進技術を誇っている場合ではないと思ったのかもしれない。あるいは、自動運転は比較的新しいかもしれないが、それ以外の「新技術」には少々手垢がついており、あまりにも燃費が悪いことで有名だったロータリーエンジンの復活などに至っては、わざわざ大きく報道する価値はないということかもしれない。地盤沈下気味で、旧技術の焼き直し的な展示会に過ぎないと。

実際、あれこれの技術が実用化されるかどうかの問題よりも、VW1社の経営がどうなるかという問題の方が遙かに大きな問題となる可能性がある。販売台数でトヨタと世界一の座を競っていた会社が経営破綻すれば、世界中で市場の争奪戦が起こる。中国とヨーロッパの環境対応車の趨勢が変わる可能性がある。これは身震いがするほど大きな出来事になるだろう。その意味で、「東京モーターショー」につき、今朝の各紙で一番冷静かつユニークな取り上げ方をしたのが、《毎日》だったのかもしれない。誉めすぎか…。

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