外国人から日本人へ。景気の調整弁として利用される「派遣」の闇

2015.12.07
by sakky(まぐまぐ編集部)
 

そもそも、企業にとって「不法就労」の外国人は実に有り難い存在で、低賃金で働かせることができ、多すぎたりトラブルが多発したりすれば入管当局が取り締まるにまかせ、強制送還させればいいと考えている。よく、皮肉を込めて「景気の調節弁」などと称されました。今では、非正規雇用の労働者一般がそのように呼ばれることがありますが、最も立場の弱い労働者群が、最も使い勝手がよいという意味で、不法就労外国人は、最高の調整弁だったのです。なにしろ、違法な存在なので、いつでも捕まえることができ、母国に送り返してしまえば後腐れがない。

派遣会社を通して製造業の現場で働いていた日系人たちも、また「景気の調節弁」としか言いようのない立場でした。需要の変化に応じて、一定期間だけ、一定の人数を送り込んでくれる派遣会社のノウハウは、このときに築かれたものと私は思っています。その後、日系人の数は減りましたが、そこに日本人の労働者が入り込み、製造業派遣や構内下請け作業の形でラインにつくようになっています。リーマンショック後の激しい「派遣切り」で分かるように、派遣会社との契約を解除するだけで、事実上、まとめて解雇することが可能です。これぞ究極の「景気調節弁」として今も機能している。日系人を利用する過程で作り上げたノウハウが、今の派遣システムの原型になったと私は考えています。派遣についてはまた別の機会にでも。

image by Alf Ribeiro / Shutterstock.com

 

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著者/内田誠(ジャーナリスト)
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